くらし 〔特集1〕震災から14年 感謝を力に、いわてから切り拓く未来(2)

■より良い復興に向けた県の取り組み
県は、これまで、次に掲げる4本の柱を軸に、東日本大震災津波からの復旧・復興に取り組んできました。これからも、その成果と課題を踏まえ、「誰一人として取り残さない」という理念のもと、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指し、取り組みを進めていきます。ここでは、県が進める新たな防災対策など、4本の柱に基づく具体的な取り組みを紹介します。

《1 安全の確保》
災害による被害を最小限に抑え、住民の安全と暮らしを守る地域づくりを推進しています。

○LINEを活用した被災者把握システムの導入
災害時に、LINEアプリを使うことで、避難所での受付時間を短縮でき、車など避難所外の被災者の支援ニーズなどを把握できる「被災者把握システム」の検討を進めています。2024年に久慈市や遠野市で実証実験を行い、多くの参加者から導入に前向きな意見をいただきました。スマートフォンの操作に不慣れな方への対応などの課題を解消し、2026年度以降、県内市町村でスムーズに導入ができるよう準備を進めています。

災害時の避難所での受付方法
平時に、市町村の公式LINEアカウントから住民情報を事前登録(代表者が世帯の情報をまとめて登録できます)。災害発生時は、避難所の受付で「QRコードを表示」をタップし、職員に提示すれば受付完了。

写真があります。
スマートフォンのLINEアプリの画面が2種類表示されています。一つ目は代表者の確認の画面、二つ目はQRコードが表示された画面です。QRコードにはサンプルと書かれています。そのほかに事前登録を行う、現在の避難状況を表示などの項目が設置されています。
※写真は本紙またはPDF版をご覧ください。

《2 暮らしの再建》
被災者が安定した生活に戻ることができるよう、さまざまなニーズに対応するための環境を整備しています。

○いわて被災者支援センターによる支援
被災者を取り巻く環境の変化により、抱える問題も複雑化・複合化しています。県は、2021年に「いわて被災者支援センター」を設置。恒久的な住宅へ移行した後において、生活面や経済面などで複雑な問題を抱えている被災者に対し、関係機関や専門家(弁護士、ファイナンシャル・プランナー)と連携しながら、生活再建を支援しています。

イラストがあります。
家族・債務問題など、どこから解決していけばいいか分からないと女性。
仕事がうまくいかず、家賃や住宅ローンの支払いが大変と男性。
※イラストは本紙またはPDF版をご覧ください。

詳細はホームページをご覧くださいの二次元コードがあります。
※二次元コードは本紙またはPDF版をご覧ください。

《3 なりわいの再生》
主要魚種の不漁対策や新たな資源の有効活用による水産業の再生、中小企業の経営力の強化など、地域資源を活用した産業振興を図っています。

○復興基金を活用した沿岸の産業振興
2024年度に公募を開始した水産加工業連携新活動促進事業費補助金。この補助金は、新商品の販路拡大や県内産の農産物を使った冷凍加工品の試作など、被災した水産加工業者を含めた複数企業の連携により実施される新事業を支援しています。

・補助金活用事例
大槌町水産加工業連携ネット通販強化事業
一般社団法人 大槌町観光交流協会
大槌町内の水産加工業者10社と連携し、その事業者の商品を販売するECサイトにおいて、システム改良や事業者紹介、商品説明ページの充実などサイトのリニューアルを図り、販売力強化に取り組みました。

写真があります。
大槌孫八郎商店のオンラインストアの画面です。元祖大槌磯ラーメン、岩手大槌サーモン、冬のギフトなどが紹介されています。
※写真は本紙またはPDF版をご覧ください。

ECサイトはこちらからの二次元コードがあります。
※二次元コードは本紙またはPDF版をご覧ください。

・その他の支援策
いわて希望応援ファンド地域活性化支援事業

《4 未来のための伝承・発信》
東日本大震災津波を風化させることなく、自然災害に強い社会の実現に向けて、震災の事実と教訓を伝承していきます。

写真があります。
ブースごとに区切られた館内のようすです。様々な展示物やパネルに説明が書かれています。
※写真は本紙またはPDF版をご覧ください。

○東日本大震災津波伝承館を拠点とした伝承と発信
陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内にある「東日本大震災津波伝承館」は、2019年9月の開館以来、国内外から多くの方々をお迎えし、おかげさまで2024年6月に来館者が100万人に達しました。館内には、これまでの三陸の津波被害の歴史、東日本大震災津波とその復興の取り組みに関わる映像や写真、実際の被災物などが展示されています。東日本大震災津波から14年、当時の記憶のない世代が増えています。直接の経験がなくとも、当館の展示を通じて、災害の歴史から学び、記憶や経験を語り継ぎ、将来に生かしてほしいと思います。あなたの行動が未来をつくります。東日本大震災津波伝承館は、これからも東日本大震災津波の事実と教訓の伝承をはじめ、復興の歩みと支援への感謝を発信し、自然災害に強い社会を一緒に実現することを目指します。
東日本大震災津波伝承館いわてTSUNAMIメモリアル 副館長 早坂 寛(はやさか ひろし)

写真があります。
館内の展示物の前に立つメガネをかけてネクタイを締めた早坂副館長です。
※写真は本紙またはPDF版をご覧ください。