- 発行日 :
- 自治体名 : 岩手県陸前高田市
- 広報紙名 : 広報りくぜんたかた 令和7年5月号 No.1189
■復旧に尽力された皆さん
◆15代吉田家当主(たかた歯科医院 院長) 吉田 裕(よしだひろし)さん
被災1カ月後ぐらいから部材回収に奔走する中で、「集まったところでどうすることもできないのでは」という思いもありましたが、近隣の皆さんから「大庄屋(おおじょうや)(大肝入の通称)はどうなるの?」と声をかけていただき、復旧への思いを強くしました。復旧が決まった時は、今泉の皆さんの心の拠り所となっていた吉田家を、ご先祖様が守ってきたこの場所に復旧することができ、とてもうれしかったことを覚えています。
私自身は、14代当主である父の仕事の都合などにより市外に住んでいた時期が長く、実際に吉田家に住んでいたのは6年ほどですが、「大座敷(おかみ)」のたたずまいなど、思い入れのある場所もたくさんあります。ぜひ奥深い今泉の歴史に触れてみてください。
◆棟梁・気仙大工 藤原 出穂(ふじわらいずほ)さん
15歳から気仙大工として歩んできた中で、市教育委員会から力を貸してほしいと声掛けがあったことをきっかけに、吉田家住宅の復旧に関わってきました。
被災した一般住宅の再建にも携わりながらの二足のわらじであったことに加え、特にも被災した部材が以前の吉田家のどの部分に当てはまるのかを整理するのが非常に大変で、約3カ月を要しました。
一方で、木材や土壁は「乾燥」が重要であり、着工から完成まで3年8カ月という長い時間をかけて乾燥できたことで、再現性の高い復旧に繋がっていると思います。
来館された皆さんには、その再現性の高さと自然の素材の良さを味わっていただけたらと思います。
◆旧吉田家住宅主屋復旧委員会オブザーバー(建築装飾技術史研究所 所長) 窪寺 茂(くぼでらしげる)さん
県の文化財指定を解除せずに吉田家住宅を復旧する方法を一緒に考えてほしいと声をかけていただき、復旧委員会のオブザーバーとして携わりました。
当初から、部材がどれくらい回収され、その中でどの程度が再利用できるかがポイントだと考えていた中、廃棄予定だった部材の山から利用可能なものを一つ一つ探したりもしました。小屋組部分の部材が多く残っていたことで、被災前の建物規模が分かり、「これは復旧できる」と確信しました。天井のある現代の建物と異なり、その小屋組がむき出しになっていることで、梁や合掌造り、かやぶきの様子などを見ることができるのが見どころです。
復興のシンボルであると同時に、貴重な県指定有形文化財としての歴史的意義を感じていただけたらと思います。
◆旧吉田家住宅主屋復旧委員会委員(東北工業大学建築学部 教授) 中村 琢巳(なかむらたくみ)さん
吉田家住宅を始めとした歴史的建造物が残る今泉地区で、40年以上にわたり研究を続けてきた本学の高橋恒夫(たかはしつねお)名誉教授の活動を引き継ぐ形で、復旧委員の一人として本事業に携わってきました。
高橋名誉教授の長年の活動により、被災前の資料や写真が数多く残っていたことが大きく、学術的な根拠を持って復旧が進められたため、非常に価値の高いものになっていると思います。
そこには気仙大工左官の職人の技術が詰まっていることに加え、限られた痕跡を手がかりに復旧した歴史ある旧吉田家住宅主屋は、震災後の新たな今泉地区のまちをつなげる存在となっており、まち全体の歴史を伝承する役割を担っています。
このような復興の形は他にありません。ぜひ足を運んでみていただければと思います。
■来館記念にマンホールカードはいかがですか?
市教育委員会では、近年のご当地マンホール蓋のブームにあやかり、旧吉田家住宅主屋のマンホールカードを製作し、1人1枚限り無料で配布しています。
開館後は旧吉田家住宅主屋にて配布しますので、来館記念にぜひどうぞ。
配布場所:
・5月22日(木)まで…市役所5階教育総務課窓口
・5月23日(金)から…旧吉田家住宅主屋管理棟
旧吉田家住宅主屋の完成をもって、東日本大震災からのハード復旧事業は完了となりました。これまで本市の復旧・復興に携わってくださった全ての皆さまに深く感謝申し上げます。
今後もソフト事業を中心に取り組みながら、本施設をはじめとした多様な施設や事業が、本市の歴史文化や復興の道のりを市内外に伝え、持続可能なまちづくりにつながるものとなるよう、歩みを進めていきます。