- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県栗原市
- 広報紙名 : 広報くりはら 令和7年10月号
■「もしも」に備えて
市内で法律事務所を営み、成年後見人としても活動する東田弁護士に、制度のポイントを伺いました。
◆interview
東風法律事務所
東田 正平 弁護士
成年後見制度の利点は、契約などの手続きを代理してもらえることです。私たちの日常生活に関わる法律「民法」では、判断能力がない人の契約行為は無効とされています。しかし、福祉施設の利用や、相続、財産などに関わる場面では、本人もしくは、後見人などによる契約や手続きが求められます。
また、高齢者を狙う詐欺の増加、親が亡くなった後に障害を抱える子が相続問題に直面するなど、1人での判断が難しい人が契約や法的手続きで不利な立場に置かれてしまうことも多くあります。そういった時に成年後見人などがいれば、本人にとって必要なことと不要なことの判断を行った上で、手続きを進めてくれます。
利用を検討する人からよく聞かれる懸念点として、申し立て時の諸経費や成年後見人への報酬が発生することが挙げられます。報酬は、本人の財産状況や支援内容を基に家庭裁判所が決定するため、高額になることはまれです。さらに、本人の財産が少なく、支払いが困難でも、諸経費や報酬を市から助成してもらえる場合があります。
この他、制度のあり方については、現在さまざまな議論が進められているため、近い将来、さらに使いやすいものへと変わっていくと思われます。
もしものときに慌てないためにも、まずは制度のことをよく知り、利用を検討することが大切です。
◇成年後見制度の利用を検討した方がよい人
・認知症や知的障害、精神疾患がある人、そういった人を監護している家族
・頼れる家族や親族がいない人
・金銭や土地といった財産を多く持っている人
・判断能力に衰えを感じつつある人
・将来の不安要素を少しでも減らしておきたい人
■心に寄り添う支援を
市内外で成年後見人を務める社会福祉士の千田さんに、活動する上での信念などを伺いました。
◆interview
宮城県社会福祉士会権利擁護センターぱあとなあ宮城 社会福祉士、成年後見人
千田 祐子 さん(築館蟹沢)
活動で一番大切にしているのは、利用者本人の心に寄り添うことです。本人にとって最も良い道は何かを一緒に考え、その実現に向けて支援を続けます。
支援の多くは、契約や財産管理など、個人のとても繊細な部分に関わるため、本人や親族との信頼関係を築くには時間がかかります。だからこそ、何度も面談や支援を重ね「この人になら安心して任せられる」と思ってもらえるように努力しています。その結果、課題解決に結び付いたときは、心の底からうれしさがこみ上げます。
自分や家族のことを他人に相談するのは気が引ける、という人もいるかもしれませんが、そこから開ける道もあります。皆さんの身近には、市役所や地域包括支援センターをはじめ、さまざまな相談窓口があります。あまり難しく考えず、まずは、気軽に相談してください。皆さんらしい未来を、一緒に見つけましょう。
■成年後見制度の疑問・質問
◇申立人が成年後見人などを選ぶことはできないのか
希望を伝えることはできますが、その人が必ず選ばれるとは限りません。また、家庭裁判所が選任した成年後見人などについて、不服申し立てをすることはできません。
◇制度を使ったら、本人の自由が無くなってしまうのか
制度は、本人の意思を尊重しながら財産や権利を守るものです。日用品などの買い物は自由にできますが、高額な買い物は、成年後見人などへの相談が必要になることもあります。
◇制度の利用をやめることや、成年後見人などを解任できるか
特別な事情がない限り、やめることはできません。本人の暮らしを守る人がいなくなることを防ぐためです。なお、成年後見人などが不正行為を行っていた場合は、解任できます。
◇家族のいない人でも、成年後見の申し立てはできるのか
身寄りのない人や、親族の協力が得られないといった人の場合は、市長が必要に応じて家庭裁判所に後見の開始を申し立てることができます。
■制度利用に関する相談先
◇高齢者
・市民生活部介護福祉課
【電話】22-1350
・築館・志波姫地域包括支援センター
【電話】24-8080
・若柳・金成地域包括支援センター
【電話】42-3233
・栗駒・鶯沢地域包括支援センター
【電話】45-2471
・瀬峰・高清水地域包括支援センター
【電話】59-3861
・一迫・花山地域包括支援センター
【電話】52-2110
◇障害のある人
・市民生活部社会福祉課
【電話】22-1340
・相談支援ころんぶす
【電話】52-3556
・障害者相談支援センターあらいぶ
【電話】21-4655
・生活支援センターポレポレ
【電話】35-5055
◇任意後見制度
・古川公証役場
【電話】0229-22-2332
◆もっと知る い・ど・う市民セミナー
地域の集会所や施設での現地開催や、ウェブ会議で制度を学ぶことができます。
また、Youtube栗原市チャンネルでは、解説動画を公開しています。
■未来のために今できることを
「いつまでも自分らしく元気に暮らしたい」という思いは、多くの人に共通するのではないでしょうか。しかし、人生は思いがけない出来事の連続で、いつ何が起こるかは誰にも分かりません。「自分に関わる物事を判断できなくなる」、「病気や障害を抱える家族を支援できなくなる」、ある日突然、こういった状況に置かれてしまうこともあるかもしれません。
私たちは、未来を予測することはできませんが、万が一の備えで不安やリスクを小さくすることはできます。成年後見制度は、利用する本人の意思を守り、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることを後押しします。そしてこの制度は、決して「特別なもの」ではなく、自分や家族にとっても身近な選択肢の1つです。
これからも自分らしく、その人らしく暮らし続けるために。それぞれの大切な権利と、笑顔あふれる日々を守るために。この機会に、家族や身近な人と未来の暮らしについて話し合うことから始めてみませんか。今できることが、きっとあります。