くらし 対談企画Z世代の2人が熱く語るCROSSTALK #森吉山×#国立・国定公園化

■環境省Ranger・西井野乃香(鹿角管理事務所)×北秋田市役所・奈良田和真(東北地方環境事務所出向)
環境省は、2030年までに陸域と海域の30%を保護地域等で保全することを目指す国際目標の達成に向けて、森吉山や田沢湖などを含む八幡平周辺の一帯を国立・国定公園の候補地として選定し、本格的な調査を実施しています。地域全体を巻き込み、無限大の可能性を秘めたこのプロジェクトについて、今回環境省に勤務している平成生まれのZ世代の2人に、樹氷が見頃を迎えた森吉山を舞台に、6つのテーマについて思いを語っていただきました。

■候補地選定は地域の誇り日本を代表する独立峰
▼(1)自然豊かな森吉山
▽西井
今日は素晴らしい樹氷を見ることができてとても感動しました。そこで地元の若者から見た森吉山の魅力を教えてください。

▽奈良田
ブナ、杉、花、滝、樹氷などとにかく見所が満載で、多くの人たちから愛されている印象があります。
そのため森吉山が国立・国定公園に昇格した後に知名度が上がり、魅力ある山であることが広く伝われば、市内はもちろん、外国人旅行者の利用も増え、今まで以上に愛される山になると思っています。
今日は晴天のもとでそびえ立つような樹氷を西井さんに見せることが出来ませんでしたが、この美しい風景を、今後もみんなで守って行きたいです。

▼普段の業務内容は?
▽西井
初任地は北海道の大雪山で、去年11月から十和田八幡平国立公園の秋田県側の管理を担当しています。
関係機関との調整役である現場事務所として公園内での無秩序な開発や利用の規制のほか、適正な利用促進のために、事業者との打ち合わせや申請書類の確認、現場確認などを行っています。
また、国内の保護地域の拡充を図るための総点検「国立・国定公園の新規指定・大規模拡張候補地」に八幡平周辺が選ばれたことで、森吉山県立自然公園が、国立・国定公園に昇格する可能性が高いので、北秋田市との関わりも増えてきました。

▼(2)自然保護との両立
▽奈良田
環境省では、自然保護と観光利用の両立について、以前とは考え方が変化しているようですが?

▽西井
どちらか一方を進めるのではなく、地域の自然や歴史を観光誘客に繋げて、その収益を環境保全に役立てる。こうした好循環を作る考え方が主流になってきています。
そのため、北秋田市民が愛している森吉山であれば、火山と山麓の渓谷や渓流、マタギ文化を含めた地域一帯の景観と文化を保護しながら維持していく形を目指すことが理想だと思います。

▼環境省の勤務は?
▽奈良田
北秋田市役所職員として、去年4月から仙台市にある環境省東北地方環境事務所で国立・国定公園の拡張や指定に向けた八幡平周辺地域の調査業務や、十和田八幡平国立公園の許認可業務(自然公園法に基づいて規制されている開発などを行おうとする時の届出・申請)に従事しています。
また、その他にも、施設の運営や各設備点検、清掃等を行う維持管理業務、上質なツーリズムを実現させるための国立公園満喫プロジェクト業務にも携わっています。

■文化的景観で紡ぐ新たな物語伝えるべき価値を明確にしPR
▼(3)森吉山の特徴は?
▽西井
森吉山を含む八幡平周辺は、国内有数の原生的なブナ林と、自然性が高くまとまりのある森林が連続的に分布しています。
また、ブナ林を生息域としている動物等の姿も八幡平周辺から連続しているなど、類似点を見つけることができます。森吉山ならではの特徴についてはどうでしょうか?

▽奈良田
森吉山は、標高の高い地域に天然スギとブナが混成する特異な森林が存在しています。
また、小又峡の三階滝などをはじめとする大小の瀑布・甌穴が連なる渓谷を山麓に有しているなど、独自性の要素も満たしていることが調査からも分かっています。

▼(4)昇格後の姿について
▽奈良田
次に、地域住民などから、昇格後は道路や宿泊施設などがつくられ地域活性化が図られるのかと言った声を聞くことがありますが実際には?

▽西井
確かに、昇格すれば知名度も上がり、観光による地域振興には期待が持てます。
ただし、その際ポイントになるのがストーリー性です。国立・国定の方向性が決まった段階で公園ごとの公園計画を作っていきますが、ストーリー性をもたせて自然の価値を来訪者に伝えることが、観光利用の面においても必要不可欠です。
ですから、私も地域の人たちと一緒に、そのことについて考えていきたいです。

▼(5)昇格した地域では?
▽奈良田
西井さんが前に赴任していた北海道での実例も踏まえて教えてください。

▽西井
令和3年に道立自然公園から国定公園に指定された厚岸霧多布昆布森国定公園では「豊かな森や湿原によって蓄えられた水が、河川の安定的な流量を確保し、地域の主要な産物であるカキ・昆布などの海産物を養っている」というストーリーで、地場産業のブランド化に取り組まれています。
国立・国定公園化により、日本を代表する風景地としての適切な保全管理が行われることが、地域にある自然を未来に引き継ぐことにも繋がるので、そうした理解が広まっていけば良いと思っています。

▼(6)北秋田市民に期待すること
▽西井
最後に、奈良田さんは森吉山の昇格に向けて、市民にどんなことを期待しますか?

▽奈良田
今回の対談で、森吉山を魅力的な公園にするためには、行政機関はもとより、地域住民の協力が必要だと感じました。
素人目線ですが、森吉山への認識を高めてもらうためには、より多くの北秋田市民が市外の自然公園に足を運び、そして森吉山との違いを知ったうえで、さらなる魅力を自身の五感で感じることが大切だと思いました。
そして何よりも、地元に愛されている森吉山が重要な局面を迎えていることに喜びを感じながら、これからも地域と一体になって頑張っていきたいと思います。

■あとがき
Z世代の若者たちに熱く語ってもらった新春対談。
今後具体的な方向性が示されるこの重要な任務に携われることは、とても光栄だと語ってくれた西井管理官、奈良田専門員の表情が印象的でした。
昇格を成し遂げるためには、地域の魅力を明確にし新たな物語を紡ぐこと、自然保護と利用の好循環を生み出すための具体的な将来像を描くことが必要となります。これらの作業は行政機関だけで完結するのは難しく、地域の人たちの協力が必要不可欠です。そうしたことから今後も、国立・国定公園化の早期実現を考え、機運醸成に向けた取り組みを進めたいと思います。

問合せ:観光課森吉山推進室
【電話】84-8105