くらし 特集2 大河ドラマに松平定信(まつだいらさだのぶ)公登場!企画 松平定信公について語る

1月から放映される令和7年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~』では、江戸時代中期に出版業界を大きく変え「江戸の出版王」と称された蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)の生涯が描かれ、松平定信公も重要な人物として登場します。本ドラマの放映は、定信公や白河を全国の方々に知ってもらう絶好の機会です。
今回はその放映に合わせ、深町洋介(ふかまちようすけ)産業部長の司会で、佐川庄司さん、菅山明美さんに定信公についてお話を伺いました。

■市文化財保護審議会 副会長 佐川 庄司(さがわ しょうじ)さん
市歴史まちづくり協議会副会長や(公財)藤田教育振興会藤田記念博物館の学芸員も務め、長年にわたり松平定信公を研究している。

■市シティセールスプロデューサー 菅山 明美(すがやま あけみ)さん
元(株)NHKエンタープライズ勤務。エンターテインメントや文化教養分野で番組制作を行ったほか、人事総務部長などを務めた。

■和歌の達人としての一面
―定信公が寛政の改革を行ったことは、日本史で学んで知っている人も多いと思いますが、どんな人物だったのかを伺いたいと思います。
佐川:定信公は、徳川家の一門で、将軍職を継ぐ家柄である御三卿(ごさんきょう)の一つ田安(たやす)家に生まれ、幼名を賢丸(まさまる)といいました。
菅山:定信公も将軍になるはずだった人ですよね。
佐川:そうですね。定信公は正義感が強く堅いというイメージを持っている人が多いと思います。田安家にいた頃、大名の素養として日本の伝統的な和歌集や物語、中国の漢詩文などを勉強しました。大名にとって、和歌を詠み、漢詩を読み書きできることは必須で、和歌は京都の公家に教わっていました。その公家達から、田安家にものすごい達人がいると評判になり、歌の内容から16歳の定信公は「たそがれの少将」と呼ばれました。
菅山:人間の心情、心の揺らぎを言葉に変換できたんですね。
佐川:堅いと言われる反面、そういうことも分かる。こうした二面性を持っていたということは、定信公を見る上で重要なポイントだと思います。
菅山:文化とか人の心のちょっとした機微とかそういうものが分かり、また、国を引っ張って政策を進めていくこともできるという人だったんですね。

■今でも定信公の恩恵を享受している
―定信公は、白河ではどんなことをされたのでしょうか。
佐川:定信公は、白河藩政として、殖産興業など、さまざまな政策を行っていますが、白河の三大史跡と言われる南湖公園、白河関跡、小峰城跡は、定信公がいなければ存在しなかったと言っても過言ではない、ということが挙げられると思います。

―そうなんですね。では、南湖公園からお聞かせください。
佐川:南湖の場所は湿地帯で土地利用ができませんでした。しかし、定信公はそこに目をつけました。江戸時代は新田開発が盛んに行われており、ここにため池を造ることで上流下流に新田開発が出来るようになる。また、単なるため池にするのではなく、大名庭園のノウハウを取り入れ、名所をつくり、公家や大名などから和歌や漢詩を寄せてもらいました。ここで、当時の大名庭園と大きく違うのは、身分にかかわらず、誰もが楽しめるという「士民共楽(しみんきょうらく)」の理念を掲げたことです。
菅山:身分制度が当たり前の時代にすごい話ですよね。
佐川:日本に公園制度ができたのが明治6年(1873)。その70年も前にこういうものを造った。これは世界史的に見ても画期的だと思います。

―次に、白河関跡についてお伺いします。
佐川:実は当時、白河関跡は所在不明となっていました。定信公は100首を超える歌に詠まれた歌枕「白河関」の地を断定するため、歴史・地理・民俗・絵画など、当時としては大変先駆的なレベルの総合的研究を行いました。結果、今の場所(旗宿)だと断定し、古関蹟碑(こかんせきひ)を建てたのです。

―小峰城についてはどうでしょうか。
佐川:定信公の老中としての最初の仕事は、天明の大火で焼けてしまった京都御所の再建でした。定信公はここで苦労し、絵画(画像学)の重要性を痛感しました。小峰城の櫓(やぐら)や門は地震、大雨、火災などにより、度々再建されており、各大名が苦労していました。こうしたことから、定信公は、後世のためにと、小峰城内の櫓、門をすべて実測させ『小峰城御櫓絵図(こみねじょうおやぐらえず)』を作成しました。これが残されているからこそ、前御門や三重櫓、現在復元中の清水門は、木造で史実に忠実に復元できていると言えるのです。これらの功績を振り返ると、今でも私たちは定信公の恩恵を享受しているのだと言えると思います。

■ドラマをきっかけに継承していく
―ドラマの放映に関して期待することはありますか。
菅山:定信公というと、これまでのドラマでは堅物で融通が利かない悪役として描かれることが多かったのですが、実は抜群の頭脳と温かく人間味あふれる心の両方を持った方だったのではないかと私は思います。今回の大河ドラマの脚本家は、人を丁寧に深く描かれる方ですから、定信公のやわらかな感性や人間らしい心がこれまでとは違った形で描かれるのではないかと期待しています。今年は、白河にとって定信公が身近でリアルな存在になる年です。大人になった定信公を演じる俳優さんはまだ発表されていませんが、できたら白河に度々来ていただいて、私たちと一緒に新しいまちづくりに参加していただけたらと考えています。混沌(こんとん)とした時代を生き抜ける新しい城下町を、定信公の精神でつくっていけたらと思います。
佐川:大河ドラマをきっかけに定信公をもっと知ってもらって、ドラマが終わっても継承していくことが大事だと思います。

―ありがとうございました。

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