くらし [特集]聴覚障がいを知る 音がなくても安心して暮らせる地域に

■2025.11.15 東京2025デフリンピック開幕
11月15日から26日にかけての12日間、聴覚障がいのあるアスリートのためのオリンピックである「デフリンピック」が、初めて国内で開催されます。会場は東京が中心となりますが、デフサッカーは福島県のJヴィレッジでも熱戦が繰り広げられます。音がなくても研ぎ澄まされた心と体で競うスポーツの魅力に多くの人が心を打たれることでしょう。

●聴覚障がいを知ろう
市内にも、聴覚障がいがあり、日常の主な意思疎通の方法に「手話」を用いる「ろう者」の方々が生活しています。彼らの日常生活にはさまざまな工夫や支援が求められています。音のない世界でどのようなコミュニケーションを取り、生活しているのかを知ることは、地域社会全体をより安心できる環境に変える第一歩になります。
本特集では、聴覚障がいへの理解を促進し、二本松市がどのような取り組みを行っているのかを紹介します。また、ろう者とのコミュニケーション方法や、私たちにできる支援についても考えます。

●二本松市手話言語条例
「手話が言語である」という認識に基づき、手話を安心して使える環境を整えることにより、ろう者を含む全ての市民が支え合いながら安心して暮らせる共生社会の実現を目指すため、令和元年12月に二本松市手話言語条例を制定し、令和2年4月から施行されました。
市では、条例の理念に基づき、日々の生活で手話を用いるろう者の支援や、市内小中学校における手話教育学習の推進、障がいに関する理解促進を図っています。

●聴覚障がいを知らせるマーク
聴覚障がいは外見からは分かりにくく、配慮や支援が得られない場合があるため、これらを参考にしてください。

▽耳マーク
聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク

▽聴覚障害者マーク
聴覚障がいであることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマーク

▽ヘルプマーク
外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に知らせることができるマーク

●二本松市の手話関係事業
聴覚に障がいのあるろう者の意思疎通、情報取得を支援する事業を実施しています。

▽手話通訳者による支援
専任の手話通訳者が、市役所窓口での手話通訳の対応や手話通訳者の派遣調整、タブレット端末を用いた対応等を行っています。また、市に登録された手話通訳者の方などを、ろう者の要請に応じて通訳場所への派遣を行っています。

▽手話奉仕員養成講座
ろう者との初歩的なコミュニケーション方法を学習し、ろう者の社会参加を支援する手話奉仕員を育成するため、厚生労働省の養成カリキュラムに基づいた内容(入門編・基礎編)を学習する講座です。

▽手話出前講座
手話の普及や啓発を目的として、学校や団体等へ講師を派遣します。手話やろう者についてなど、手話に接したことのない人にもわかりやすい内容となっています。

●使ってみよう!手話講座
※詳細は本紙をご覧ください。

▽私たちにできること
ろう者とのコミュニケーションの取り方は手話だけではありません。「筆談」や「読話(口の動きを見て言葉を読み取る)」などのほか、短い言葉なら空中に文字を書く「空文字」で伝わることもあります。もし困っているろう者に気づいたら、まずは視界に入って、何かできることはないか、積極的に関わってみましょう。
手話は手の動きだけでなく、表情などでも表現する言語です。聴覚障がいのあるろう者によりそう気持ちを体全体で表し、積極的に関わることで、音がなくても安心して暮らせる地域社会の実現を目指していきましょう。

●私立二本松聾唖(ろうあ)学校
~二本松の歴史を紐解く~
二本松市には県内で初めて、しかも民間の方々の努力による聴覚障がい児のための支援学校がありました。学校は龍泉寺の境内に大正15年に置かれ、近隣から多くの聴覚障がい児が通学していました。
障がいに対する理解が今よりもずっと乏しい時代に、学校に携わる龍泉寺のご住職をはじめとする関係者が、差別や偏見に苦しみ、生活に不便や不安を抱える障がい児の支援に尽力されました。
学校は、昭和19年に福島県立ろう学校に合併されましたが、私立二本松聾唖学校が果たした役割の大きさを私たちは忘れてはいけません。