くらし 特集 「知の巨人」磯崎新がしかけた水戸芸術館のひみつ

音楽、演劇、美術の専用施設で、各施設の特性を生かした事業を活発に行っている水戸芸術館。
今回は、開館35周年を迎えた水戸芸術館のふしぎなかたちに隠された”ひみつ”を紹介します。

■建築のひみつ

実は、この3つの専用施設だけでなく、建物全体が同じ石やタイル、金属で仕上げられているため、自然な統一感が生み出される仕組みになっています。設計者の大胆な発想と繊細な工夫が、来館者に心地いい空間を提供しているのです。

■タワーのひみつ
市制100周年にちなんで建てられた高さ100mのタワーは、いまや水戸のランドマークとなっています。
生物の遺伝子構造と同じらせんの形は、人類が歩んできた「過去」を、空に向かって垂直に伸びる形は、水戸の「未来」を表しているのです。

■施設のひみつ
三層の客席が舞台を取り囲み、どの席からでも迫力を感じられる劇場。音響にこだわり、観客同士の視線も行き交う六角形のコンサートホール。一部屋ずつ変わる広さや差し込まれる光によって、美術作品ごとの最適な展示ができるギャラリー。各施設の特徴を生かしたさまざまな事業を、市民に、そして世界に向けて発信しています。
これらの文化施設をつなぐエントランスホールは、まさに「文化と文化の交差点」。多様な人々が行き交うことで、新しい価値観が生み出される仕組みになっているのです。

■建築家のひみつ
たくさんの「ひみつ」が仕掛けられた水戸芸術館を建築したのは、20世紀を代表する建築家・磯崎新。磯崎氏は、便利さや快適さのために建物の形を決めてしまう近代建築を批判し、その土地が持つ歴史的背景や地域性を大事にし、その場所の象徴となるような建築を追求しました。
磯崎氏の探求心は建築のみに留まらず、思想や美術、文化論など、さまざまな分野でも活躍しました。2019年には、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」の受賞を果たします。建築を中心に研究を重ねたその姿を、人々は「知の巨人」と呼んだのです。
磯崎氏は水戸芸術館を設計する際、「建築される前に、それを運営する中身が組み立てられていることが、いい施設になる鉄則である」という考えのもと、運営母体の設立時から理事に就任。建物がよりよく生かされていくために、企画や演出、展示などに直接かかわり、最期まで運営の充実に努めました。
その想(おも)いは今もなお、水戸芸術館と来館者、そしてこのまちをつなぎ、支え続けています。

◇磯崎 新(いそざき あらた)
1931-2022

「知の巨人」が描いた”未来都市”をのぞき見できる企画展。
気になる見どころを、主任学芸員の井關(いせき)悠さんに聞いてきました。

◇どんな企画展?
建築のみならず、幅広い分野で功績を遺した磯崎氏。
本展では、磯崎氏の60年以上にわたる活動を、「群島」のように構成します。建築模型や図面、映像、版画、水彩画、スケッチなどさまざまなメディアをとおして、磯崎氏の軌跡をたどっていきます。

◇見どころは?
都市デザイナーを名乗っていた若かりし頃の磯崎氏は、実現するはずのない未来の都市を思い描いていました。しかし21世紀に入った今、なんとその都市が実現しつつあるのです。
東京都の改革構想や1970年開催の大阪万博など、国家的なプロジェクトに関わっていた頃に描いた「未来都市」を、一部紹介しています。ぜひお楽しみください。

◇誰でも芸術館を楽しめる?
初めて磯崎建築に触れる方に向けて、入場者に「水戸芸術館ガイドブック」をプレゼントします。同館の施設紹介だけでなく、デザインについての解説もありますので、本展を楽しんだ後、ガイドブックを片手に館内をめぐってみてはいかがでしょうか。

より詳しい解説を聞きたい方には、「水戸芸術館館内見学ツアー」がおすすめです。毎日開催していますので、お気軽にご参加ください(事前予約可・有料)。

日時:11/1(土)~R8.1/25(日) 10:00~18:00
※入場は17:30まで、月曜日(祝日のときは翌日)・年末年始(12/27(土)~R8.1/(土))休館
料金:一般900円、団体(20名以上)700円、高校生以下・70歳以上無料

問合せ:水戸芸術館
【電話】227-8111

問合せ:
水戸芸術館【電話】227-8111
文化交流課【電話】291-3846