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■歩崎観音の大祭
8月16日、歩崎観音の大祭が、地元の魅力向上を目指す志戸崎集落運営委員会を中心に執り行われました。今回は歩崎観音と大祭について、市民学芸員の貝塚久美子さんが紹介してくれました。

歩崎観音は昭和8年(1933)、県指定名勝の第1号となった名勝地「歩崎」に所在しています。参道を進むと見えてくる本堂は、太平洋戦争時の空襲による爆風で傾き、今でも2本の丸太が裏から支え続けており、往時の空襲の激しさを伝えています。「歩崎の晩鐘」として有名だった釣鐘は戦争時に供出されましたが、平成8年(1996)に集落の方々により平和への願いを込め新たに鋳造・奉納され「開運の鐘」と名付けられました。本堂のすぐ傍に下げられており、誰でも撞くことができます。
歩崎観音の大祭は、地元をはじめ霞ヶ浦沿岸各村にとっても一大行事でした。霞ヶ浦に堤防ができる前は、各村からひょっとこやおかめの面を着けた若者が囃子船で10隻以上も集まり、一日中盛り上がったそうです。昭和32年(1957)カンヌ映画祭出品作で、同年にブルーリボン賞を獲得した映画「米」には、この場面が登場します。
戦後80年となる令和7年の大祭は、幕開けに和太鼓同好会「あゆみ太鼓」の勇壮な演奏が境内に響き渡り、時とともに歴史を刻んできた鐘の音を合図に大祭が始まり、本尊の十一面菩薩立像のご開帳・護摩焚き法要と、厳かに進んでいきました。遠方からの参拝者も多く、境内は大変賑わいました。集落で守ってきた大祭は、後世に残すべき民俗文化です。途絶えてしまうことのないよう、時代に即した形で伝えていきたいものです。

問合せ:歴史博物館
【電話】029-896-0017