くらし なめがた大使小林光恵さん書きおろしエッセイ 五感でキャッチ!なめがた漫遊記第15回

■古代蓮(はす)の話題から
行方出身の友達Pさんと、カフェで待ち合わせた。二人で決めるべき一件があった。
Pさんは私が着くやいなやスマホ画面を見せながら言った。
「羽生に、古代蓮が群生している溜(ため)池があるの知らないでしょ。ほら、これ」
画面には、羽生の古代蓮の花が見ごろのころのVRが映し出されていた。花びらの数が少なめの気高さを感じる蓮の花々。
「古代かあ、万葉びとも、この蓮の花をめでたんだろうねえ」
と思わずつぶやくと、
「あっ、うっとりしてる。やっぱり、この話題に食いついてきた!」
とうれしそうにPさん。
ならば私も彼女が食いつきそうな話題に持って行こうじゃないか、と思い、
「そういえば万葉集のころはまだカタカナひらがながなかったから、原文はすべて漢字で、当て字表現も多く、中には、蜂音と書いてハチが飛ぶ音の《ぶ》、八十一と書いて《くく》って読むような遊び心のあるのもあったらしい」
「当て字って、おもしろいよね!春夏冬、と書いて商売の《あきない》って読ませるとか。やはり、よろしく、の当て字は、露の字使ってるのがすごいとも思ってて」
見事に食いついた。そして私たちは、行方市の面白い当て字を考えてみよう、ということに。
しかし二人とも納得のゆく当て字が思いつかず、次第にトーンダウンして、黙りこんでしまった。
そこでPさんが言った。
「行方ってさ、ヤマトタケルノミコトが《行細し(なめくわし)》って表現したらしいことが由来なんだよね」
「だよね、あっ、そうだ、ヤマトタケルノミコトも、あの、古代蓮、めでたんだろうね」
「そうだよ、一件落着!」
そこで時間となってしまい、結局、話すはずだった件は話せずじまいとなり、あとでメールでやりとりして決めたのだった。

■小林光恵さん
行方市出身。つくば市二の宮在住。8月に開催される「鹿行地域 魅力を深堀り2.~目指せ、観光マイスター~」に参加します。楽しみです。
市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。