- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県行方市
- 広報紙名 : 市報なめがた No.240(令和7年8月号)
対談・鈴木周也市長(2)―セカンドライフと地域活性化
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
■専門性を生かしたセカンドライフ
野田(前回から続く)。高齢化社会を迎えている行方市においては、退職後のセカンドライフが重要であり、地域活性化にもつながると存じます。例えば、市役所のOBやOGには、行政の専門性を生かした、行政と地域との橋渡し役を期待されるかと存じますが、いかがでしょうか。
市長 退職後も地域でご活躍をいただくことは、フレイル対策になるとともに、コミュニティーの発展にもつながるため重要です。会社や市役所を退職後、コミュニティーのリーダーである区長、民生委員や保護司(いずれも非常勤で無償の公務員)として活躍されている方々もいらっしゃいます。民生委員は、住民の立場に立って相談に応じたり、必要な援助を行ったりと社会福祉の増進に努める活動をされています。保護司は犯罪者や非行少年の更生を助け、犯罪予防のための啓発活動等を行っています。
また、食分野での専門性を持つ方による、食生活改善推進員協議会の活動も重要です。食生活の改善を通じて、成人の高血圧や糖尿病、脳疾患や心疾患の予防に寄与するほか、子どもたちにとっての食育アドバイザーとしてもご活躍いただいています。地域社会では、こうした人材は本当に貴重であり、信頼される存在です。
■地域資源としての高齢人材と専門知識・技能の伝承
野田 高齢者は、福祉の対象であるばかりではなく、地域の担い手・地域資源といえるのではないでしょうか。長年の経験に基づく知識や技能は、地域にとっても重要だと思われますが、いかがでしょうか。
市長 地域社会では、人手不足が深刻であり、専門知識・技能の伝承においても、高齢者にご活躍いただくことが重要です。地域の伝統文化や防災等に加え、本市の重要な産業である農業でも、高い技術や優れた知識を持つ高齢者の存在は欠かせません。農作物は、年1回しか収穫できないものが多く、しかも自然条件は毎年変わります。
農業の専門的な知識や技能の習得には、長年の経験の蓄積が求められます。高齢者の持つ貴重なノウハウを次世代に継承していくことが極めて重要です。
■退職後の就農支援と「生きがい・やりがい」
野田 私が以前調査した別の自治体では、定年後や早期退職されて農業を始め、元気に活躍される方もいらっしゃいました。
市長 本市では、新規就農の補助金の支給年齢を55歳まで引き上げて支援しています。会社等を退職後に農業を始め、農産物を本市の道の駅「こいこい」に出荷して、収益を上げていらっしゃるケースもあり、地域経済の循環に寄与しているといえます。
「自分で作ったものを自分で食べる、自分で売る」という充実感や、精神的なゆとりが生まれることも重要だと思います。こうした高齢人材が、さまざまな取り組みを通じて得られる「生きがい・やりがい」も注目すべきでしょう。