- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県平塚市
- 広報紙名 : 広報ひらつか 令和7年3月第3金曜日号
◆地域福祉の拠点を作った社会事業家
「富田レイ」
明治39(1906)年、現在の真田で生まれる。旧姓・上野。夫の富田省造が創設した平塚幼稚園を継承して湘南福祉センターを築いた。国から昭和42(1967)年に藍綬褒章(らんじゅほうしょう)、51(1976)年に勲六等宝冠章を受章。平成17(2005)年没、99歳。
◇地域のための保育園
富田レイは、保育園を拠点に地域の社会福祉に取り組んだ人物だ。特別展でレイを担当した杉園佐智子さんは、「困っている人を助けたい、という思いがずっと根底にある方です」と紹介する。
レイの幼児教育への思いは、17歳で経験した関東大震災の後、託児所での奉仕活動や自身の療養期間などで芽生えたものだった。必要な資格を取り、生涯、幼児教育の現場で奔走し続けた。
・『困った』に応えたい
昭和4(1929)年、レイは富田省造と平塚幼稚園を設立。5年に2人は結婚した。6年に幼稚園を移転した宮の前は、商家の多忙な親が多かった。富田夫妻はさまざまな要望に応えるため、8年に託児所を平塚幼稚園に併設し、保育園に変えた。当時は、朝4時に預けた親が、夜遅くまで迎えに来られない、というのは日常だった。
戦時中も幼児教育の場を絶やすことはなかった。資金集めに苦しみながらも、二つの戦時保育園を開設。しかし省造が亡くなり、さらに戦後の経営は難航した。そのため一つの戦時保育園を譲渡。その中でもレイは、平塚保育園と平塚第1戦時保育園(現在の柳町保育園)での保育の場を守り抜いた。28(1953)年には、地域住民の声に応え、明石町保育園を開いた。
・社会福祉の先駆者
昭和40(1965)年、現在の湘南福祉センターが完成。ここでは児童養育相談所と診療所を併設しただけでなく、かねてニーズの高かった「乳児保育」を始めた。44年には市と地域の要望に応え、横内保育園を開いた。杉園さんは「地域のための保育園という思いから、必ず地域の名前が付いています」と加える。
また障がいのある子と共に過ごせる統合保育が必要だと考えていたレイ。統合保育が認可された高村保育園を、52年、71歳のときに開いた。
子どもたちの「じょうぶな身体とやさしい心のため」というレイの思いを、後を継いだ人たちも大切にし続けている。レイが築いた社会福祉の拠点は全て、これからもその役割を担っていく。
◆(春期特別展)近代ひらつかの女性たち
期間:3月22日(土)~5月18日(日)
場所:博物館特別展示室
さまざまな関連イベントが開かれます。女性史の視点で紹介される、平塚ゆかりの10人の生涯を知り、今の時代を考えてみませんか。家族や関係者からお借りした、貴重な資料などを展示します。特別展で紹介する女性たち(生誕順に記載) 比企キヨ、村井多嘉子(たかこ)、戸倉ヤマ、上原とめ、濱田(はまだ)イシ、盛キヨ子、村井米子、清田(きよた)華、富田レイ、沖津くら。
展示の最後では、女性史をたどれる書籍を閲覧できます。ぜひ、ご覧ください。
◇特別展記念講演会 神奈川の女性史
講師にノンフィクション作家で女性史研究者の江え刺さし昭子さんを迎え、近代神奈川の女性史の流れを学びます。
日時:3月29日(土)午後2時~3時30分
定員:80人(当日先着順)
◇展示解説
図録で各人物の執筆を担当した平塚人物史研究会会員らが解説します。
日時:3月23日(日)・5月10日(土)、午後2時~3時
◇関連展示
会期中、「ジェンダー平等のあゆみ」をパネルで紹介します。市人権・男女共同参画課による展示です。特別展示室前。
◆戸倉ヤマ×プラネタリウム
戸倉ヤマにちなんだイベントです。音楽と共にプラネタリウムを楽しみませんか。
プラネタリウム室。当日先着順。各開催日の午前9時から博物館の受付で整理券を配ります(1人5枚まで)。
◇プラネタリウム・ミニコンサート 戸倉ヤマの歌の道
曲目は、明治時代に初めて作られた子どものための唱歌や、日本人初のオペラ「オルフォイス」公演で戸倉ヤマらが歌った二重唱などです。
日時:4月19日(土)午後3時30分~4時30分
定員:60人
◇星空音楽館 ギリシア神話の世界
戸倉ヤマが主演した演目「オルフェオとエウリディーチェ」を含む、ギリシア神話をモチーフにした楽曲を聞きながら、関連する星座を紹介します。
日時:4月20日(日)午後3時30分~4時20分
定員:70人
費用:200円、18歳未満と65歳以上の方は無料。65歳以上の方は年齢が分かるものをお持ちください
問い合わせ:博物館
【電話】33-5111