くらし [特集]広がる認知症理解の輪(1)

9月は認知症月間、9月21日は認知症の日です。今号は、本年度から新たに市内で始まった民間企業と連携した認知症カフェや、認知症の本人や家族らが交流できる場を紹介します。

◆早期の対策でリスクを減らす
市内で唯一、認知症疾患医療センターに指定されているメモリーケアクリニック湘南(四之宮5-20-4)の認知症専門医、内門 大丈(うちかど ひろたけ)院長に話を聞きました。

◇中高年期から対策を
認知症は、脳の病気によって日常生活に支障をきたす状態をいいます。認知症は「どこからが認知症か」と線引きできるものではありません。
40歳代くらいから認知症になり得る可能性を自覚しておいて、予防的な視点を持っていた方が良いと考えます。
認知症はさまざまな要因で引き起こされます。血管障害のリスクになるものは全て認知症のリスクにもなります。例えば、中高年期に減らせるものとして、高血圧や悪玉コレステロールがあります。これらは早く知ることで改善できますし、認知症以外の健康状態も良くなります。中高年期の過ごし方が直接、認知症に影響していきます。認知症の知識を身に付け、相談場所などを早めに知っておくのが良いでしょう。

◇人と関わる大切さ
認知症のリスク要因には、社会的孤立も挙げられます。認知症カフェや認知症の本人と家族の一体的支援プログラムは、参加者同士や専門職のスタッフとも交流できるので、社会的孤立を防ぐとても意義のある場です。適度な距離感で、ストレスなく会えるのもポイントです。私も患者さんにこれらの活動を紹介しています。人との交流が予防に効果的です。

◇認知症初期に見られる症状
・少し前のことをしばしば忘れるようになった
・物や人の名前が出にくくなった
・意欲が低下して趣味や外出が消極的になった
・新しいことを覚えるのが難しく(時間がかかるように)なった
・仕事に支障が出るようになった

「認知症の本人や家族が自分らしく暮らし続けられるよう、市では認知症の早期発見や理解促進に力を入れています」と話す、市高齢福祉課の課長代理、佐草牧恵さん。令和7年4月1日現在、市の65歳以上の人口は7万4411人、高齢化率は29・0パーセントです。高齢化が進むことで、認知症の方も増えていくことが予想されます。「市内では、認知症カフェなど認知症にまつわる相談や交流の場が広がっています」。

◆認知症カフェとは?
認知症の方や家族、地域の方、専門家らが集い、気軽に交流や情報交換などができる場のこと。
民間企業による認知症カフェの他、高齢者よろず相談センターなどが開く認知症カフェも地域ごとにあります。認知症の診断を受けていない方も参加できます。詳しくは、市ウェブをご覧ください。

◆誰でも参加できる
4月から、デニーズ平塚見附店(見附町46-11)で、De`Cafe(デカフェ)という愛称の認知症カフェが始まりました。「De`Cafeは、若年性認知症支援コーディネーターや、認知症サポーター養成講座を受講したスタッフが同席する他、県平塚保健福祉事務所や市の職員もいるので、若年性認知症の相談にも乗れるのが特長です」と語ります。6月からはスターバックスコーヒー平塚田村店(田村1-5-7)でも、美 now CAFE(び ノウ カフェ)という愛称の認知症カフェが始まりました。「美 know CAFEは認知症疾患医療センターの看護師、高齢者よろず相談センターや市の職員も同席しています。認知症で不安なことがあれば、多方面からサポートできます」と佐草さん。「これまで市内では、飲食店での認知症カフェはありませんでした。誰でも気軽に行ける飲食店で開くことで、一緒に食べたり、お喋(しゃ)べりしたりして楽しい気分になれるのが強みです」と期待を込めます。

◆本人や家族に寄り添う
また市では、認知症の本人と家族の一体的支援プログラムも展開しています。
本人と家族が参加でき、一緒に活動を楽しむことで、互いが抱く課題の解決を図れるだけでなく、他の家族とも交流できます。音楽やフラダンスなどを通して交流を楽しめる内容になっています。「認知症の知識がある専門職も必ずいるので、安心して参加できます。他の家族と知り合い、日頃の悩みなどを相談し合えるのもポイントです」。