くらし 〈連載〉誠実・信頼・希望〔加藤 憲一〕

◆市政の現場を支える、職員の力

3月下旬から4月上旬にかけての年度の入れ替わりは、年間で最も「人」が動く季節です。市役所においても、退職を迎えた職員を見送り、新たに仲間入りする職員を迎え、そして異動する職員には新たなミッションを託す、そうした一連の動きが、日々慌ただしく行われていきました。別れがあり、出会いがあり、新たな旅立ちや仕切り直しがあり…当事者となる皆さんはさまざまな思いを抱きつつ、この季節を過ごされていることでしょう。

市長としての仕事は、形式的にはいずれも「辞令交付」。でもその一枚一枚の辞令をお渡しする際に、市役所に長年奉職し、退職される皆さんには感謝とねぎらいの言葉を。新たな持ち場に異動する皆さんには「くれぐれもよろしく頼む」との思いを。そしてこの春から仲間入りしてくれた皆さんには、心からの期待と激励を。言葉や表情をもってしっかりと伝えることが大切です。

辞令交付以降は、幾つかのグループごとに市長として訓示・講話を行いました。まず、事務職・技術職・専門職・消防職の新採用職員約70名には、時代と社会についての認識や、地方公務員が果たすべき役割、小田原という都市の大いなる可能性などを。次に、病院採用の医師・看護職など医療職約100名には、小田原市民特有の健康上の課題、当地域で市立病院が果たしている役割、来年5月に新病院の開院を迎える準備などを。そして、この春から新たに「監督者」(部下を持つ立場)になる職員約40名には、組織の「ミドル」としての重要性、自らが市を代表する意識を持って仕事をすること、自身の心身の健康を保つことの大切さなどを。最後に、市政を率いる理事・正副部局長には、時代についての大局観、令和7年度の位置付けと重点目標、組織運営上の留意点などを。いずれも、できるだけ真っすぐに、思いが届くように話をしました。

未曽有の社会的課題に取り囲まれ、先行きは極めて不透明、例題も模範解答もない市政運営の現場で、課題解決の鍵を握るのは「人」の力に他なりません。財政が厳しさを増し職員の数を増やすことが難しい中、市民との信頼関係の上に、職員一人一人が意欲と誇りを胸に気持ちよく力を発揮できる市役所を創(つく)ること。それが、市長としての極めて重要な責務であると心得ています。