健康 認知症になっても「安心して暮らせるまち」を(2)

■支援する人にインタビュー 渋江拓郎さん
作業療法士。医療法人社団NALU介護事業本部兼認知症事業部ゼネラルマネージャー。「海老名市認知症初期集中支援チーム」の事務局で責任者を務める。

認知症のサインや予防方法、当事者の支援方法について聞きました

Q.認知症が疑われる行動は?
A.「言っていることとやっていることが違う」「同じ物を何度も買ってきた」など、今までの行動に変化を感じた時は、認知症のサインかもしれません。「最近何かおかしい」という、ちょっとした違和感を大切にしてください。

Q.よく見られる初期症状は?
A.認知症は脳の萎縮によって発症し、さまざまな症状が見られます。よく言われる初期症状が最近のことを忘れてしまう「記憶障害」、目は見えていても自身と対象の位置関係がわからなくなる「視空間認知障害」、時間や場所、人物を認識・理解する能力が低下する「見当識障害」です。家の位置がわからなくなり、徘徊(はいかい)が起こることもあります。

Q.認知症と診断された時の本人や家族の反応は?
A.ご本人や家族が認知症と診断されると、混乱する人が多いと言われています。結果を聞いて「やっぱり」と安堵(あんど)する人もいますが、認められない人のほうが多いと思います。自身の認知機能が低下していることを認識できず、医師が言っていることを認めることができないのも、認知症の症状の一つだと思います。

Q.本人が受診を拒んだ時、家族にできることは?
A.認知症は早期に、適切に対処することで、症状の進行を緩やかにすることができ、生活の安定や家族の負担軽減にもつながります。困った時は、私たちのような専門職に相談してほしいです。認知症の疑いがある本人が受診を拒んだら、きょうだいや孫など、本人が一番信頼する存在に助けを求めるのがいいと思います。家族が抱え込んでしまうケースが多く、「もっと早く相談してくれていたら」と思うこともあります。

Q.進行を防ぐためにできることは?
A.認知症の症状は、他の病気が原因で発症している場合もあります。例えば、高血圧や糖尿病、精神疾患などが原因で認知機能が低下することがあります。認知症の進行を防ぐためには、医療機関を受診し、正しい診断を受けることが大切です。
社会とのつながりを持つことは予防になります。家に閉じこもっていると頭を使わない生活になりがちなので、外に出かける機会を作りましょう。生活習慣を整えることも大切です。たばこ、お酒、お菓子の食べ過ぎは控え、適度な運動も取り入れて、健康的な生活を意識するだけでも脳や体は変わってきますよ。

Q.近所に認知症の人がいたらどう関わる?
A.初期症状として、「お金が取られた」と近所の家に怒鳴り込むなどの症状が見られることがあります。このような問題行動には、原因があると言われています。例えば、「独居で家族が疎遠」「認知機能が低下してご飯を食べられていない」「エアコンが使えず暑い部屋で過ごして健康状態が悪くなっている」などがあげられます。症状の原因を探るのも専門職の仕事です。困った時は、認知症初期集中支援チームや民生委員、地域包括支援センターなどに相談してほしいです。
認知症が進行して自宅で暮らせなくなり、馴染(なじ)みの環境から離れると、認知機能はさらに衰えてしまいます。できるだけ地域で過ごせるように、一時的に症状が見られたとしても、できる限り地域の方々にも受け入れてほしいです。
専門職に相談すること、周囲の人たちと協力し合って見守ること、どちらも認知症の予防と支援に必要で、大切なことなんですよね。

問合せ:地域包括ケア推進課
【電話】046-235-4950