- 発行日 :
- 自治体名 : 新潟県
- 広報紙名 : 県民だより 令和7年秋号
~将来にわたる棚田の維持保全や地域の持続的発展のための取組を始めています~
■棚田にはどんな役割があるの?
◇農業生産の場
・一般的に水源が近くにあり、標高が高く、昼夜の寒暖差が大きいため、おいしいお米の生産に適しています。
◇生物多様性の保全(生態系の保全)
・棚田には多様な生物が生息しており、環境を維持することにより、豊かな生態系が保たれています。
◇土砂災害・洪水防止、水資源の保全
・棚田を保全することで、土砂崩れの発生を抑制することができます。
・降った雨は畔に囲まれた田んぼに一時的に貯留され、ゆっくりと浸透して地下水となり、下流地域の川の流れを安定させる働きがあります。
◇美しい景観や伝統文化の保全
・棚田は、安らぎを与える我が国の原風景であるとともに、先人達の築いた歴史・伝統文化を守り伝えています。
佐渡では、相川金銀山が発見されると、富を求める人々により爆発的に人口が増加。食糧需要に対応するため新田開発が促され、海に面した崖の上から山間深くまで耕す棚田の風景がつくられました。
金銀山がもたらす豊かな生活とともに、多様な農村文化が育まれました。
でも…
棚田は道が狭くて機械が入らない、畦が急で草刈りが大変など農作業にとても手間がかかるのが特徴で、このような生産条件の厳しさや、農業者の減少・高齢化によって、荒廃の危機に直面しているんだ。棚田を保全する人材の確保が課題となっているよ。
そこで…
未来に向け、総力をあげて棚田地域の振興を図るために、県では令和7年度を「にいがた棚田みらい元年」として様々な取組をスタートさせたよ。
▽目指すみらい
県内外の方々が棚田の美しい景観やその背景にある歴史・文化に魅力を感じ、棚田地域で生活する方々が棚田の価値を再認識することを通じて、棚田地域の交流人口の拡大、地域の活性化につなげる。
■棚田のみらいを考える!
◆こうなってほしい! 新潟の棚田のみらい
多くの人々が交流する場に
棚田みらい応援団受け入れ地区
兵庫 勝さん
市民活動団体UKUU代表
▽さまざまな人が関わってくれる棚田に
目の前に海が広がる景色が魅力の「歌見の棚田」は、近年、生産者の高齢化や担い手不足により、面積のうち半分のみで米づくりをしています。かつては一家総出で作業し、その雰囲気が幼いながらに好きだったのですが、時代の流れとともにその風景は一変。高齢の方がひとりで作業していたり、子どもの姿が見えなかったりすることが寂しく、若い人にも棚田を知ってもらうための体験イベントを独自で始めました。
棚田みらい応援団を受け入れてからは、企業も含め更に多くの方々に関心を持っていただいています。地域に残る「鬼の田植え伝説」にちなみ鬼の姿で作業するなど、楽しい経験にできるよう工夫しています。
棚田の維持には、生産性の向上とともに多くの皆さんから関わっていただくことが重要だと考えています。今後も色々なイベントを計画し歌見を盛り上げていきたいです。
◆こうなってほしい!新潟の棚田のみらい
都市と農村、両方の人々で守っていく
棚田ステーション主宰
星 裕方さん
十日町市地域おこし協力隊
▽都市部住民が「通い農」で支える未来へ
棚田を将来にわたって維持するために、オーナー制度もアップデートする時期に来ていると感じます。農業体験に来た人たちが、その後継続して自分たちの力で米作りができる仕掛けが必要と考え、移住・定住と体験の中間をつなぐ「通い農」を提案しています。今年4月には体験拠点となる棚田ステーションを立ち上げました。サイズ感が手頃で個人でも手掛けられるという棚田の利点を活かし、都市部住民が棚田に通って耕作に携わるライフスタイルが定着する未来を目指しています。
私自身、東京で忙しく働いていた頃に、機会があり松代地域の棚田で草取りに参加したところ、精神的に開放される経験をしました。田んぼでの作業は、意外にも都会で多忙に働く人にフィットする体験だと思っています。農業体験をした人が「通い農」へつながるよう、この取組を進めていきます。
◆こうなってほしい!新潟の棚田のみらい
のどかで、活気もある棚田に
棚田みらい応援団参加者
野口 慎之助さん
新潟食料農業大学4年
▽棚田の景観の美しさを多くの人に知ってもらいたい
大学からの案内で「棚田みらい応援団」に興味を持ちました。活動先は糸魚川市の東塚棚田で、2年生から4年生までの間に計8回参加しました。初めて棚田を見た時はその景観の素晴らしさにとても感動し、夕景写真はスマホの待ち受けにしています。
活動では、田植え、水路の掃除、稲刈りを経験し、農家さんの家に泊めていただいたこともあります。その時、集落には空き家が増えていて、生産者の皆さんも高齢者が多いという実情を聞き、今すぐ棚田が無くなることはないけれど、このままの状況では時間の問題なのかなとも感じました。棚田の存続のためには、まずは人手が必要なのだと思います。
卒業後は地元の栃木に戻りますが、今後も東塚棚田に手伝いに行きたいです。住む人が増えて、ゆったりとした農村の良さを残しながらも、活気がある棚田の姿になってほしいと願っています。
インタビューを深掘り!
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