健康 健康講座(242)

■良寛さんの暮らしと糖尿病の検査のおはなし
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
坂町病院 主任臨床検査技師
加藤 久美子

新潟県が誇る偉人、良寛さん。江戸時代の僧侶であり、やさしい詩や美しい書で今も多くの人々に親しまれています。そんな良寛さんは江戸時代としては長寿でした。その秘密の一つは「食べ物と心の持ちよう」にあったのではないかと考えられています。
良寛さんは日々の暮らしの中で贅沢をせず、お米や雑穀、季節の野菜や香り良い山菜、海の幸を少しずつ、ときには村の人からいただいた食べ物を感謝しながら味わっていたそうです。
現代の私たちの暮らしは便利になり、つい食べすぎたり偏った食生活になりがちです。気づかぬうちに血糖値が高くなり、生活習慣病への扉を開いてしまうことも…。
良寛さんのような「ちょうどよい暮らし」は、現代でいうところの「血糖値の安定したからだにもよい暮らし」とも言えるかもしれません。良寛さんのご長寿にあやかり、糖尿病と検査についておはなししたいと思います。

1.糖尿病ってなんですか?ブドウ糖ってなんですか?
血液中のブドウ糖が多い状態が続いてしまうのが糖尿病です。
ブドウ糖はからだを動かすための大事なエネルギー源です。食べたり飲んだりしたものが胃腸で吸収分解されたあと、ブドウ糖は血流にのって体をめぐります。ブドウ糖はインスリンというホルモンの作用を受けて細胞の中に取り込まれ、エネルギーとして役目を果たしています。
ブドウ糖の血液中の濃度を「血糖値」といいます。食事で血糖値は高くなりますが、ブドウ糖があまるほど高い状態が続くのが「高血糖」の状態です。

2.「高血糖」はどうしてだめなんですか?
ブドウ糖があまっている状態が続くと血管を痛めてしまい、体の活動を支えてくれている内臓の働きに影響があります。困ったことに、糖尿病の最初の頃はあまり自分で症状に気づきにくいと言われています。それを見つけて、早い段階で対処するために検査で見つけようというわけです。

3.糖尿病の検査HbA1c(へモグロビンエーワンシー)ってなんですか?
血液の中の赤血球には酸素を運ぶ働きをもつヘモグロビンが含まれています。このヘモグロビンにブドウ糖がくっついたものがHbA1cです。
過去1〜2か月の間の平均的な血糖値の状態が分かり、糖尿病の診断や治療の効果をみるために検査します。
病院に普段行かない方も、村の健診や職場の定期健診、人間ドックなどの採血で調べることができます。
HbA1cは6.0%を超えてくるとこれだけで糖尿病の診断がつきます。
※血中には常に一定のブドウ糖が流れているので、ある程度の割合でHbA1cが存在します。HbA1cの健診での基準値は5.6%未満です。
わたしたちの地域にも、糖尿病と長く付き合ってきた方がたくさんいらっしゃいます。
日々の食事や薬の管理、透析治療。それぞれが、その人の暮らしを大切に守るための努力をずっと続けてこられました。糖尿病と「うまく付き合う」こともできるのです。
症状のない方、自分のことはつい後回しにしてしまう方にお伝えしたいことは「気づいた今が、一番早い」ということ。「なんとなくダルいなあ」「最近調子が悪いなあ」というからだが出している小さな声に気づいたら、がまんして放っておかずにかかりつけ医に行ってみましょう。
病院にかかっていない方、若い世代の方も、健診結果のHbA1cの数値を確認してみましょう。

焚くほどは風がもてくる落葉かな

良寛さんのように日々の食事に感謝をし、ときには自分の体の声に耳を傾けてみる。その積み重ねがこれからの私たちのからだを作っていきます。

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