- 発行日 :
- 自治体名 : 富山県氷見市
- 広報紙名 : 広報ひみ 令和7年9月号
■海獣と氷見
〜海生哺乳類と人のかかわり〜
6月号ではクジラについて紹介しましたが、クジラをはじめ海で暮らす哺乳類を総称して海生哺乳類や海獣と呼びます。
縄文時代には、この海生哺乳類の仲間である鰭脚類(ききゃくるい)のうち、特に日本近海に広く生息していたニホンアシカが捕獲、利用されており、全国各地の遺跡から骨が出土しています。アシカは肉が食用にされたほか、豊富な脂肪も利用されたと考えられます。
氷見では、朝日貝塚でニホンアシカの骨が出土しており、大境洞窟遺跡でもアシカ類の骨が確認されています。近隣では、石川県輪島市の沖合にある七ツ島がニホンアシカの繁殖地として知られており、明治時代にはアシカ猟が行われたことが記録に残っています。おそらく縄文時代には富山湾沿岸にもニホンアシカが生息していて、捕獲の対象となったのでしょう。
かつて日本近海の島々で繁殖していたニホンアシカですが、油や皮を取るために乱獲され、その数を減らしていきました。1970年代に島根県竹島で目撃されたのを最後に現在ではその生息が確認できず、すでに絶滅したものと考えられます。
また、同じくアシカ科に属するオットセイは、太平洋北部、ベーリング海、オホーツク海に分布し、日本近海には冬から春にかけて、エサを探して三陸沖や日本海に回遊してきます。氷見でも、平成22年(2010)3月に松田江浜に生きたオットセイが漂着しています。縄文時代には、北海道から東北地方でオットセイ猟が行なわれていたそうです。氷見でオットセイと確定できる骨が遺跡から出土した例はありませんが、沿岸に漂着したオットセイが利用されることがあったのかもしれません。
(博物館主査 廣瀬直樹)
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