- 発行日 :
- 自治体名 : 石川県加賀市
- 広報紙名 : 広報かが 令和7年1月号
■漆芸家
Mushu Art Studio 山崎夢舟
山崎夢舟さん
▽経歴
18歳の時に、蒔絵師中村省三氏のもとに弟子入りし独立後、数々の作品を生みだしさまざまな賞を獲得。過去には2年連続個人最高賞の農林水産大臣賞を受賞されています。またニューヨーク、ドイツを中心に活動し最近では台湾、中国などでも作品を発表し国内外問わず活動されています。
「鴨」「菖蒲」「萩」「梅」といった加賀の代表的な情景を伝統技法である加賀研出高蒔絵で描いた、加賀市の自然と文化の豊かさを表現した作品です。
今回は大きな作品なので制作する際には、作業部屋を改修し5つのパーツに分割し制作しました。作品が大きく中腰になる作業が多く、よく腰を痛めました。
今回の事は名誉なことで加賀依緑園に納めた作品「雪客」(縦、横180cm)と今回の加賀情景(径200cm)に約2年間の製作期間を費やし後世に残る作品造りのプレッシャーと納期に間に合わせる闘いでした。大きな作品は大雑把になりがちですがひとつひとつの繊細さを失わないように近く、遠くから見ても私の思いが伝わるように造りあげた作品を見て頂ければ幸いです。
■蒔絵師
小林漆芸工房
小林正俊さん
▽経歴
高校を卒業するとともに、輪島にある漆芸技術研修所で漆芸を学び、その後加賀市に戻り、先代から続く家業を継ぎ、現在は小林漆芸工房の代表としてさまざまな作品を生み出しています。カナダ・ケベック博覧会にて展示会を開き、そこでは蒔絵の実演を行い、日本文化を紹介するなど国内外問わず活動されています。また、G7広島サミットでは、G7各国首脳及び国際機関の長へ作品を贈呈されるなど輝かしい功績を残しています。
今回の作品は、デザインの段階から約2年ほどかけて完成しました。約30枚もの案をつくり、そこから関係者の皆さんからのいろいろな意見を聞き、試行錯誤しながら現在のデザインに至りました。また制作を進める中で迷走する時もありました。どうすれば加賀市の情景を上手く表現できるかとういことを一番に考え、こだわりを持って制作しました。
山中の総湯文化(菊の湯)を象徴するような菊の花を、お湯が沸き出てきているようなイメージで真ん中に描いています。その周りには、紫陽花や鴨など加賀市独自の情景が分かるようなものを散りばめています。また作品の中には、沢山のカニが描かれている箇所があります。その中に一匹だけ、タグのついたカニが紛れているので、是非直接見て探してみてほしいです。
観光客がふと立ち止まって見た時に、「また加賀市にきたい」と思って見てもらえるようなものになれば良いなと思います。また、若者が加賀市の伝統を知るきっかけにもなってほしいです。
また組合の方を含め、たくさんの人たちの協力があり完成した作品となっており、携わった方たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。
■陶芸家
妙泉陶房専務
山本高寛さん
▽経歴
京都にある陶工の専門学校を卒業後、清水焼森俊山氏のもとで修業し、その後加賀市にもどり、現在は、父山本篤氏が代表と務める妙泉陶房にて数々の素晴らしい作品を生み出しています。2019年の令和天皇皇后両陛下御紋入器の製作にも携わっています。
あれだけ大きいものを制作するにあたり、初めはどう進めていいかもわからない状態から、職人総出で試行錯誤しながら完成させました。今回の作品は6種類の型を使用し、ひとつひとつ手作りした105個のパーツを組み合わせた作品となっています。こういった作り方のもので、これだけ大きいものは日本にはないと思います。また105個のパーツは、それぞれ予備も含めて制作しています。また、生地は焼くと縮むものなので、それを考慮し、計算しながらの制作になるのでとても大変でした。
加賀温泉駅に訪れた方が、改札を抜けてすぐに目に留まるくらい迫力のある作品となっています。少しでも見てくれた方が、加賀市に興味をもってもらえたらと思います。
また今回の作品は、比較的若い職人の手で制作されています。今後を担う職人たちが制作したものに対し、見てくれた方はどう感じてくれるのか楽しみな気持ちです。
■陶芸家
加賀九谷陶磁器協同組合副理事長
北出太郎さん
▽経歴
大学では日本画を専攻、その後大学院では陶磁を専攻し修了した後、祖父である北出不二雄氏のもとで修業し、これまで数々の上絵付け作品を手掛けています。またこれまで数多くの賞を受賞されており、第40回伝統九谷焼工芸展では保存会技術賞を受賞するなど素晴しい経歴を残されています。
今回携わった作品「青手竹虎図平鉢古九谷写」の実物は、現在加賀市美術館に展示されています。その実物の線描の力強さや迫力を活かし表現するため、色の調整をこだわりました。特に紫については虎の紫、雲の紫2種類の紫が存在しておりそれぞれの色彩が重要な要素である為、再現するのにとても苦労しました。実際に焼いてみると色が変化したりするのでとても大変でした。
作品に携わることができて本当に光栄に思います。今回の経験を経て、試行錯誤していく中で、新しい発見などもあり、たくさんのことを学ぶことができ、経験に勝るものはないと実感しました。
また、作品を実際に見ていただき、九谷焼特有の美しさを感じていただき、ここ加賀市が九谷焼発祥の地であり、ここから伝統が始まったということを知ってもらえたらと思います。