くらし 認知症、ひとりじゃない(1)

高齢者の5人に1人がなるとの推計もある認知症。認知症っていったいどんな症状なの?鯖江市内にはどんなサポート体制があるの?私たちにとって身近な認知症について、おじいちゃん・おばあちゃんのことが大好きな孫世代の子どもたちと一緒に考えます。
(取材協力…サポーター養成講座を受けた小黒町児童センターの子どもたち)

■認知症ってなあに?ボクたちのおじいちゃんおばあちゃんもなるかもしれないの?
〔長寿福祉課・西村さん〕
認知症は記憶力が低下したり、新しいことを覚えにくくなったり、集中力が落ちやすくなるなどの症状が現れます。
でも、「認知症=何もできなくなる」という訳ではありません。認知症になってもその人らしく、希望を持って暮らし続けられるという前向きな考え方が最近では広まっているんですよ。

■認知症が進まないようにするためにはどうしたらいいんですか?
〔長寿福祉課・西村さん〕
運動・食事・睡眠を大切にすること、人と話すこと、耳を大事にすること、頭を使うこと、お酒とタバコを控えること、社会参加をすることなどが良いとされています。
つまり、「誰でもなり得る可能性はありますが、予防できる部分も多い」ということです。

■市内にはこんな方も。ピアノや家事を楽しむTさんのお話です。
「譜面を読むだけじゃない。左右の指で別々の動きをするのが難しいんです。でもそれが楽しい。今は3連符のメロディを練習しています」
そう言って白い歯を見せるのは、市内に住むTさん(83)です。昨年春に初期の認知症と診断されましたが、日課にしているピアノに指を置くと、鍵盤の上を指が動き始めました。
きっかけは4年ほど前。自身に異変を感じ、病院を受診したときのことでした。
「脳のMRI検査を受けたところ、医者から『海馬が小さくなっている』と言われたんです」
ショックを受けたTさんは友人に漏らしました。
「僕、アカンようになるかもしれん」
そんな時、落ち込む気持ちを救ってくれたのは友人の言葉でした。
「海馬が小さくなっても大丈夫。本を読んだり、歩いたり、ピアノを弾いたりして、何でもいいから挑戦してみて脳に刺激を与えるといいよ」
その言葉に一念発起。娘さんが使っていたピアノで練習を始めました。手先が人一倍器用なのは眼鏡職人として長く働いてきたからでしょうか。ゆっくりではあるものの、徐々にレベルが上がっていくことにやりがいを感じています。
Tさんの妻(82)も前向きです。夫が認知症と診断された時も「歳を重ねるとそうなるもの」と冷静に受け止めました。それに、生活面での工夫も実践しています。その一つが週に1回の夕飯作り。毎週木曜の夜はTさんがご飯を作る係なのです。
「最初は作り方が分からないから、妻にレシピを紙に書いてもらって始めたんです」
照れ笑いするTさんをフォローするように奥さんが続けます。
「でも、結構上手なんですよ。おみそ汁なんかは頭とはらわたを取っただしじゃこから出汁を取ってくれるから、おいしいんです」
Tさん手製のみそ汁は具だくさんなのが特徴です。「ちょっと具を少なくしてほしい時もあるんですけどね」
そう言うと、2人で顔を見合わせて笑いました。

問合先:長寿福祉課
【電話】53-2265