文化 ふるさと昔 よもやま話(162)

■旧三笠ホテルリニューアルオープンに寄せて~若狭国吉城歴史資料館巡回展より~
10月1日、長野県軽井沢町に所在する国重要文化財の旧三笠ホテルが、5年半にわたる大規模な保存修理工事を終え、リニューアルオープンを迎えました。これを記念して、若狭国吉城歴史資料館では、現在町内の公共施設を移動する巡回展「美浜と軽井沢の不思議なご縁」を開催しています。
三笠ホテルは明治38年(1905)、避暑地軽井沢の北方にある通称三笠山(愛宕山)に竣工され、翌年開業しました。すべて日本人によって建設された純西洋式ホテルで、本館部分は木造2階建て、凹型の建物が残ります。軽井沢の冷涼な気候を好んだ外国人だけでなく、桂太郎や西園寺公望、渋沢栄一、有島武郎らの著名人も数多く訪れたことから「軽井沢の鹿鳴館」と謳われました。
ホテルの創業者山本直良は、軽井沢の広大な土地を避暑地として開発した実業家であり、その土地は父の直成が所有していたと伝わります。山本直成は佐柿ゆかりの実業家であり、岩倉具視に仕える一方で、十五銀行(三井住友銀行)や日本郵船等の役員を務めました。このように、ホテルの経営には町ゆかりの実業家父子が深く関わっており、避暑地軽井沢の発展にも大きく貢献していました。
ホテルは昭和45年(1970)まで経営され、その後同55年(1980)に国重要文化財に指定、同58年(1983)に一般公開が開始され、軽井沢のシンボルとして多くの避暑客を迎えてきました。しかし、竣工から100年以上が経過し、建物の老朽化が進んだことにより、令和2年から令和7年3月まで耐震補強を含む保存修理工事が実施されました。その際、解体を伴う建物の痕跡調査の成果に基づき、大正末期から昭和初期の姿に復原されました。外観については、撤去されていた2カ所の車寄が復元され、特に正面中央の車寄は開業当初に設けられたものであり、創業者山本直良が見たものと同じ光景を見ることができると思うと、感慨深いものがあります。館内には旧三笠ホテルや軽井沢の歴史を紹介する展示室やカフェが整備され、さらに、バリアフリー化を図るため、建物東側にエレベーター・トイレ棟が新設されました。
巡回展は、10月23日現在、なびあすで開催しており、今後レイクセンタ―・歴史文化館の順に移動します。歴史文化館では資料館との交換展示を兼ねて、旧三笠ホテルと創業者山本家の繋がりについて、より具体的に紹介する計画です。お出かけの際は、ぜひお立ち寄りください。
(若狭国吉城歴史資料館)