- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県長野市
- 広報紙名 : 広報ながの 2025年8月号
本市では、小規模事業者によるワインなどの製造を支援するため、2023年に「長野市ワイン・シードル特区(※)」の認定を受けています。
本年6月、特区を活用して免許を取得した「有旅ワイナリー」が、篠ノ井有旅にオープン。同ワイナリーの醸造責任者の田中啓さんにお話を伺いました。
※…市内で生産された「ブドウ」や「リンゴ」などを原料として果実酒を製造する場合、酒類製造免許に係る年間の製造数量基準を、酒税法に基づく基準の6千リットルから2千リットルに引き下げるもの。
■有旅ワイナリー(株)醸造責任者
・田中啓さん
ホテルやバーなどでソムリエとして勤務後、2016年に生産者へ転身。複数のワイナリーで修業の後、地元篠ノ井で有旅ワイナリーを開業。
◇ソムリエから生産者へ
ソムリエとしてワインバーで働いていた時、生産者と話す機会があり、いつか地元でワインを造りたいと考えていました。
「やるからには妥協なく、思うがままにワイン造りをしたい」。その思いから、開業に踏み出しました。
◇有旅の土地・景観に惹(ひ)かれて
品質の良いワインを製造するためには、畑とワイナリーの隣接が鍵になります。いろいろと畑を探しましたが、有旅は、土地も景観も、私の求めていたものが全てそろっていて、標高、日当たり、水はけのよさなどが、ブドウの栽培に最適でした。
◇妥協のないワインを造るために
ワインは農産物なんですよね。ブドウの品質がそのまま製品に現れるので、ブドウの力を最大限に引き出す栽培を心掛けています。
有旅ワイナリーでは、摘果時の選果に加え、選果台でも実の選別を行っており、風味を損ねる腐敗果や熟していない粒などを取り除いています。繊細な味を再現するためには、避けては通れない重要な工程です。
◇地域の皆さんとのつながり
地域の皆さんが、「有旅ワイナリー倶楽部」と称して、摘果や選果、出荷などを手伝ってくれています。
最初からワイン好きというわけではなかった人もいると思いますが、ワイナリーを通して、この地域を盛り上げたいという思いを共有する中で、いろいろと応援していただいています。
正直なところ、こんなに地域の皆さんに協力してもらえるワイナリーになるとは思っていませんでした。妥協のないワインを造ることを目指し、その成果物を「篠ノ井有旅のワイン」として広く発信することで、地元の人が喜んでくれることがうれしかったですね。
今後も地域とのつながりを大切にしながら、地域の人に喜んでいただけるよう、いずれは世界に羽ばたく有旅のワインを造りたいです。
■編集後記
ワイナリーの前には、地域の小学生が植樹したブドウ畑が広がります。地域と協働の取り組みは、住民の皆さんからの提案で始まったそうです。地域に愛されるワイナリーで造られたワインが、長野市の新たな名産品となることを願っています。