くらし 移動村長室〈広報はら版〉共に進める私たちの地域づくり

「移動村長室」は、牛山村長が村内各所に出向き、住民の皆様と直接お話をする取り組みです。このページでは広報はら版「移動村長室」として村長が先日訪問したベントンビルについて掲載します。実際に開催される「移動村長室」については16ページをご覧ください。

◎アーカンソー州ベントンビル市(Bentonvill,ARKANSAS)
面積は55.1平方キロメートル、人口約5万人(本村は43.26平方キロメートル、約8000人です)。スーパーマーケットチェーンのウォルマート創設の地。近年、アメリカ国内からの移住先として注目されています。

■アーカンソー・ベントンビル視察報告
原村長 牛山 貴広

5月14日から20日の7日間、私はアメリカのアーカンソー州ベントンビル市を訪問し、地域振興のヒントを得るための視察を行いました。今回の視察は、自転車を活用した地域づくりと観光について学ぶことが目的です。

◯自転車文化で拡がる地域の魅力、活力
自転車による観光事業の構想は令和元年頃、五味前村長時代にスタートしました。アウトドア用品の専門企業で、トレイル整備事業も行う株式会社エイアンドエフ(A and F、東京都)から村有林を活用した観光事業の可能性についてご提案をいただいたのです。
その想いを受け継ぎ、本村における村有林の活用・管理をより良い形で進めるため、私はこの視察を実施しました。村有林は村の美しさを形作る重要な存在ですが、広大ゆえに管理コストも膨大で、毎年少しずつしか整備できません。事業にすることで整備の負担を軽減できると考えています。
視察地のベントンビルは、自転車文化(特にマウンテンバイク)が地域の基盤に根付いています。道路には広い自転車専用道が整備され、商業施設では屋上まで自転車のままアクセスできました。
この市は一見観光地のようでいて、実は国内から移住してきた自転車愛好家たちが賑わいを作り出しています。30年前、人口は2万人ほどでしたが、現在では5万人以上にまで増加しています。その背景には自転車文化を核とした地域特有の魅力があると感じました。

◎トレイルビルダー(コース設計者)のゲイリーさんなど、たくさんの方から有用なアドバイス、経験談をお聞きしました。
◎ベントンビル市長のカレン・グリフィスさんと。本村の取り組みを聞いて、私たちを市へご招待くださいました。

◯失敗談からの学びも
ベントンビルの自転車インフラは、民間主導です。行政は小規模なバックアップに留まり、むしろ地元企業や住民が主体となって取り組みを推進しているとのことでした。レイザーバック・グリーンウェイという舗装された約60kmの自転車道の他、自転車道やハイキング道を合わせ500kmもの距離が整備されています。元はと言えば子ども達が作った40mほどの道がきっかけだったそうです。
視察の中では、成功例だけでなく多くの失敗談を教えていただきました。「自転車道は長ければ良いわけではなく、地元のニーズに合わせて緩やかに進めることが重要」といったアドバイスは特に印象的でした。
本村でも、このような自転車文化を基軸にしたまちづくりは可能性を秘めています。自然を活用した観光は村の重要な柱ですが、そこに自転車を組み合わせれば、新たな移住者層の誘致や地域活性化につながるでしょう。

◯未来を見て一歩から
また、皆さんにぜひお伝えしたいことは、林間コースの整備に際して、原則として木を切らずに進める方針だということです。これは、自然と共存する村づくりという本村らしい考え方そのものです。
全てが完成するには、まだ5年、10年の時間が必要ですが、その第一歩から皆さんと共に取り組んでいきます。そのためにも移動村長室や説明会などで、多くの方にご意見を伺っていきたいと思っています。広がる森林の中、地元の子どもたちが安全に自転車を楽しんでいた姿に、私たちの村の未来を見たように感じています。

◎整備されたパークだけでなく、街中が自転車のために作られたようでした。アスレチックのような建造物も、自転車コースの一部です。
◎ベントンビルの風景は、私たちの村にも似ていませんか?日本は道が狭いですし、特に長野県は起伏もあります。オフロードでマウンテンバイクを楽しむのにぴったりです。
◎お世話になったホームステイ先のご家族と。左から2人目はA and Fの代表取締役赤津大介さん。右はA and F社在籍の浦島悠太さんで、世界的にも著名なトレイルビルダーです。
※詳細は広報紙6~7ページをご覧ください