文化 出土品が伝える古代の各務原

今年7月、鵜沼真名越町に位置する真名越(まなこし)遺跡から、銅製の「権(けん)」と呼ばれる奈良時代の錘(おもり)1点が出土しました。この号では、出土した錘がどのような物であったのか、またそこから分かる当時の各務原について紹介します。

■「権」とは?
「権(けん)」とは、物の重さを量るための錘(おもり)のこと。大宝律令により定められた度量衡(どりょうこう)(長さ・体積・重さの基準)に沿って量るために用いられました。竿秤(さおばかり)の片方に吊るし、税として納入される物品の重さを量るなど、公正な取引や記録を支えていました。
今回、真名越(まなこし)遺跡で出土した「権」は「花弁状笠部」と呼ばれる特徴的な形状をしており、中央から地方の役所に配布された錘の基準となる見本「様(ためし)」だと推測されます。

■当時の各務原
真名越遺跡は、これまでは古代~中世の大集落遺跡だと考えられてきました。しかし今回、「権」の「様」が出土したことで、古代の公的機関が置かれていた可能性が高まりました。古代の幹線道路の一つであった東山道(とうさんどう)のルート上に位置し、各務駅(律令制で、原則30里ごとに設置するよう決められた駅)の推定地や木曽川にも近いため、税の徴収以外にもさまざまな取引が行われていたことや、公認の計量器を扱う施設が置かれ、専門の役人が配置されていたことなどが考えられます。

■「権」を特別公開
出土した「権」の特別公開を行います。ぜひ、お越しいただき、ご覧ください。
期間:11月3日まで 午前10時~午後5時(10月14・15・20・27日は休館)
場所:中央図書館3階歴史ギャラリー(那加門前町3)

◆学芸員が語る「権」の見どころ!
奈良時代に使用された銅製の「権」は、佐賀県の吉野ヶ里(よしのがり)遺跡や静岡県の山廻(やままわり)遺跡など、全国でも数例しか出土していません。
出土した「権」の装飾である花弁状笠部は、錘の実用を超えた繊細な形状をしています。その精巧な作りに、ぜひ、ご注目ください。

※詳しくは本紙をご覧ください。

詳細:埋蔵文化財調査センター
【電話】058-383-1123