くらし 市政羅針盤(らしんばん)

染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:超高齢社会を生きる -安心できる医療と介護の体制づくり-

■長く生きることが当たり前の社会に向けて
日本全体で高齢化が進む中、本市においても65歳以上の高齢者は市民のおよそ3人に1人を占める時代を迎えています。単に「高齢者が増える」という現象ではなく、「長く生きることが当たり前になる社会」へと、私たちは確実に移行しています。今月は、ご長寿をことほぐ敬老の日にちなんで、本市の高齢者支援施策についてお話します。
市民一人一人に住み慣れた地域で安心して暮らし続けてもらうためには、医療・介護・福祉の各分野が連携し、切れ目のない支援体制を構築することが不可欠です。島田市では、この「地域包括ケアのまちづくり」の取組を多方面で進めています。

■本市が力を入れている高齢者支援
まず、地域医療の中心的な役割を担うのが島田市立総合医療センターです。令和5年に新病院がグランドオープンし、急性期から在宅医療につなぐ機能の強化を図ってまいりました。救急医療の充実はもちろんのこと、地域の診療所や訪問看護、介護事業所との連携体制を強化することで、「入院から在宅まで」「治療から生活支援まで」を切れ目なくつなぐ、地域完結型の医療体制の確立を目指しています。
次に、本市が全庁的に取り組む「重層的支援体制整備事業」(愛称 しま with(ウィズ))についてお話します。これは、高齢者や障害者、子育て世帯、生活困窮者など、それぞれの分野で個別に行われていた支援を一体的に提供し、複合的な課題や制度の狭間に対応していく新しい仕組みです。特に高齢者の中には、認知症や身体機能の衰え、経済的困窮、社会的孤立といった課題を複合的に抱える方が少なくありません。重層的支援体制によって、こうした方々に関係する支援者がチームとなって、最後まで伴走する、地域の支援が可能になっています。
また、超高齢社会では、在宅介護の支援がますます重要になります。家族が高齢者を自宅で介護することは、身体的・精神的にも大きな負担を伴います。本市では、訪問介護・訪問看護・リハビリ・福祉用具貸与・短期入所など、在宅支援の充実を図るとともに、介護者への相談支援やレスパイト(休息)支援にも力を入れています。認知症の家族をもつ方々の集いの場や認知症本人の交流の場も提供しています。さらに、歯科医師会のご協力で、寝たきりなどの事情により通院できない方のために訪問歯科診療を実施しています。
その上で、特に注視すべきなのが、独居高齢者の見守りです。今や、高齢者の4人に1人は一人暮らし。誰にも気づかれずに孤立してしまうケースが少なくありません。こうした課題の解決は、「地域の見守りの目」と「ICT(情報通信技術)の活用」の両方が必要と考えます。具体的には、民生委員・自治会・ボランティアの皆さんと協力しながら、定期的な声かけや訪問による「人の見守り」を行うと同時に、高齢者に何かあったとき、ご自宅に設置したボタンから家族や警備会社に緊急通報が入るシステムや、スマホ、スマートウオッチなどの活用で緊急通報できる仕組みの導入なども考えていただきたいです。

■「支え合いのまち」を築くために
こうした重層的な支援の根底にあるのは、「住み慣れた地域の中で最期まで自分らしく生きる」という理念です。総合医療センターや地域包括支援センター(高齢者あんしんセンター)、介護事業所など専門機関の支援に加え、近隣住民や地域のつながりの中でこそ、高齢者は安心感と尊厳をもって暮らすことができます。この10年、本市は「元気な高齢者が地域で活躍できるまちづくり」に取り組んできました。これからの10年は、元気なときも、病気や、介護が必要になったときも、変わらずに暮らし続けられる「支え合いのまち」を築くフェーズです。
高齢者福祉は、単なる「サービス提供」ではありません。それは、人生の最終章に寄り添い、どう生き、どう老い、どう旅立つかという人間の根源的なテーマと向き合うことでもあります。だからこそ、私たちは真摯に、丁寧に、持続可能な支援のかたちを模索し続けます。「ゆるやかに老いを楽しむ秋日和(あきびより)」(拙句)と感じていただけるよう、本市は、誰もが人生の最期まで安心して過ごせる「超高齢社会のモデル都市」を目指して、これからも挑戦を続けてまいります。

問合せ:秘書課
【電話】36-7117