- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県大府市
- 広報紙名 : 広報おおぶ 2025年10月1日号
障がいなどの特性によって、意思疎通の手段が限られる方が、不安を感じたり、周囲と交流しにくかったりすることがあります。
そういった壁を越えるために、社会にはさまざまなコミュニケーション手段があります。みんなが等しく情報を得て、安心した生活を送ることができるよう、一緒に始めてみませんか。
■「見えない」ってどんな感じなんだろう
▼Interview
○周囲が見えない生活実際はどんな感じ?
私はほんの少し明るさが分かるくらいですが、ほぼ見えていません。目が見えないと何もできないのでは、とよく思われるようですが、家事などちゃんとできるんですよ。最近はいろいろな機器に音声機能が付き、とても使いやすくなりました。スマホも便利ですね。
自宅では、容器の形が似ている調味料などに、シールを張ったり、輪ゴムを掛けたりして、触って識別できる工夫をしています。薬などにも、箱や袋に薬名と飲み方などの点字シールを作って貼っています。
○歩くときは怖くないの?
1人で外を歩くときは、白杖を使って慎重に歩いています。白杖で地面をたたくと素材で音が変わるので、それを道しるべにすることもあります。点字ブロックがあると歩きやすく、信号やエレベータの前など注意する場所が分かるので、とても助かります。
誰かと一緒のときは、肘を持たせてもらって歩くと安心ですね。
○お手伝いしたいとき、どんなふうに声を掛ければいい?
遠くからだと分からないので、近くに来て肩をたたいて声を掛けてもらうと、自分に話し掛けられていることが分かりますよ。
▼人とのつながりが、今の私を支えています
吉田裕美子さん
元々見えていたのですが、病気で視力が下がり、15年ほど前に全盲になりました。
視力を失ったときは、やはりどうしたらいいのか不安でした。そんなとき、通っていた施設で出会った視覚障がいのある皆さんが、障がいに負けずに生き生きと過ごしている様子に触れました。彼らからいろいろな知恵を授けてもらい、私もこの先、大丈夫なんだと希望を持つことができました。
見えない苦労はもちろんあります。でも大切なのは、人とのつながり。家族や友人、ボランティアの皆さんの支えがあって、今の私があると思っています。
私も視力を失って不安を感じる人に、大丈夫だよと伝えていきたいです。
※「吉田」さんの「吉」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
▼誰もが等しく情報を得るために制定された条例
市では2022年4月「大府市障がいのある人のコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」を制定しました。障がいの有無に関わらず、誰もが等しく情報を得て、意思を伝え合える共生社会の実現を目指したものです。
見え方・きこえ方などの違いでコミュニケーションに障壁がある場合、それをサポートするために、手話・点字・文字・音声・絵カードなど、情報を伝える多様な手段があります。みんながそういった手段があることを知り、状況に合わせて使っていくことができれば、誰もが平等に情報を得て、活躍できる社会になります。
障がいのある人・サポートする人など多くの声をきき、思いを込めて世に送り出した条例です。
■「きこえない」ってどんな感じなんだろう
▼Interview
○音のきこえない生活実際はどんな感じ?
「ろう」と言っても、きこえ具合は人それぞれ違います。私は人工内耳を装着していますが、外していると飛行機のジェット音もきこえません。装着していると30デシベル(鉛筆で文字を書く音)くらいまできこえます。人工内耳や補聴器を装着していても、きこえにくい音質はあります。高い音や機械を通した音がきこえにくい方もいますね。
人との会話は、ざわざわしていない、静かな場所だと聞き取りやすいです。サイレンなどがきこえないときもあるので、文字の情報は助かります。
○分かりやすく言葉を伝えるには、どんな工夫をしたらいい?
手話ができなくても、紙やペンを使ってやりとりする筆談、体で表現する身ぶり、口の動きを読み取る口話(こうわ)など、コミュニケーションする方法はいろいろあります。話をするときは、ゆっくり大きく口を動かして話してもらえると分かりやすいです。
○日常で、意外なところで起こる困ったことはどんなこと?
自宅を訪れた人が、インターホン越しに話をするときや、無人駅などで、係の人への連絡手段が電話機しかないときに、困ることがあります。
▼手話を学んで、交流の世界が広がりました
佐藤かおりさん
3歳の時に高熱を出して聴力が下がり、20代で聴力を失いました。現在は人工内耳を使っています。
小学3年生までは口話でやりとりしていましたが、ろう学校で手話を使う機会が増えて、自然に覚えました。
今は日常生活に大きな不便を感じていませんが、災害時に正確な情報が取れるか心配です。信頼できるところからの文字情報が大きな助けになると思っています。
細かい説明を受けるときなどは、事前に手話通訳者を依頼しています。文字起こしをするスマホの無料アプリを使うこともあります。SNSのチャットのように楽しく使えるものもありますよ。