- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県岩倉市
- 広報紙名 : 広報いわくら 2025年4月号
尾北歯科医師会岩倉地区会 医療法人康樹会 はまじま歯科クリニック 浜島 悟
口腔機能低下症は、加齢に伴い口腔機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。これは、食べることや話すこと、さらには呼吸や嚥下(えんげ)に関わる機能が低下することにより、生活の質が大きく影響を受ける可能性があります。高齢者に特有の症状として、口腔機能低下症は、歯の喪失や唾液分泌の減少、口腔内の筋力低下、嚥下障害など、さまざまな要因によって引き起こされます。
まず、歯の喪失は、口腔機能低下症の主要な原因の一つです。歯が失われることにより、噛む力が弱くなり、食べ物を効率的に摂取できなくなることがあります。噛む力の低下は、消化器系への負担を増加させ、栄養の摂取不足を引き起こす可能性もあります。また、義歯を使用している場合でも、適切にフィットしていない義歯は、噛み合わせの不調和を引き起こし、さらに食事が困難になることがあります。
次に、唾液の分泌量の低下も重要な要因です。唾液は、口腔内を清潔に保ち、食べ物を飲み込みやすくするために必要不可欠です。唾液の分泌が減少すると、口腔内の乾燥を招き、嚥下や会話が困難になります。また、口腔乾燥は虫歯や歯周病などのリスクを高めるため、口腔の健康維持には十分な唾液の分泌が不可欠です。
さらに、口腔内の筋力低下も口腔機能低下症の一因です。口腔内の筋肉は、食事を摂るために重要な役割を果たしますが、加齢に伴い筋力が低下することで、食べ物をしっかりと噛むことが難しくなります。また、嚥下機能の低下により、食べ物や飲み物が喉にうまく通らず、誤嚥を引き起こすリスクが高まります。
口腔機能低下症を予防するためには、定期的な歯科健診や適切な口腔ケアが不可欠です。特に、歯科医師や歯科衛生士による専門的なケアやアドバイスを受けることが重要です。また、口腔機能を維持するための口腔体操や嚥下訓練など、日々のトレーニングも効果的です。
口腔機能低下症は、健康全般に大きな影響を与えるため、早期の対策と継続的なケアが重要です。日々の生活の中で、口腔の健康を意識し、予防や改善に努めることが、元気な生活を支える基盤となります。