文化 教えて! 学芸員のタナカさん

歴史民俗資料館の学芸員・田中が町にまつわる歴史や文化等を紹介するコーナーです。

◆戦後80年 戦時下の道具 千人針(せんにんばり)
千人針とは、日露戦争の頃から広まった弾除けのお守りのことです。「千」には、「大勢」「たくさん」という意味があります。1メートルほどの横長の白布に、女性が赤い糸で一人一つ玉結びをします。女性たちは、戦場での無事を祈り、兵士となった男性は千人針を腹に巻いて戦いました。
千人針は、一人一針が原則でしたが、特例が存在しました。寅年生まれの女性は年齢の数だけ玉結びを作ることができました。「虎は千里行って千里帰る」という言い伝えにあやかったものと言われています。当時寅年の女性は重宝されたそうです。
もう一つの特徴は、5銭と10銭が結ばれていることです。死線(4銭)、苦戦(9銭)を超えるという意味からつけられています。
戦時資料には、兵士の無事を願うものが多く残されています。『玉砕(ぎょくさい)』の印象が独り歩きしがちですが、実際には帰りを望む思いがありました。その思いに触れるとき、今の平和は当たり前ではなく、守り続けるべきものと実感します。

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