健康 お答えします! 健康に関する素朴な疑問 健康なんでも相談室

市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。
ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長
谷崎 隆太郎 医師

■今回は高齢者の肺炎球菌ワクチンについて、その重要性を谷崎先生に聞いてみました!
◇「肺炎」は死因の上位に!
私たち人間の死因は、悪性新生物(いわゆる「がん」)・脳血管疾患(いわゆる「脳卒中」)・心疾患・肺炎・老衰の順に多くなっています。若年者の死因では自殺・不慮の事故などが多い一方で、高齢になるにつれ肺炎の順位が上がってきます。令和5年度の死亡統計では、肺炎は70歳以上の死因の4・5位に位置しています*1。その肺炎を起こす細菌のうち頻度が高く、重症度も高いのが「肺炎球菌」です。

◇肺炎球菌とは?
肺炎は軽症のものから重症のものまでありますが、重症の肺炎球菌肺炎は死にいたる可能性があります。中には、肺炎球菌が血液の中に入り込んで全身を巡ったり、頭の中に入り込んで髄膜炎(ずいまくえん)を起こしたりする侵襲性(しんしゅうせい)肺炎球菌感染症という病態もあり、この場合はさらに致死率が跳ね上がります。もちろん、医療の進歩により重症の肺炎球菌の患者さんたちの救命率は飛躍的に向上していますので、肺炎球菌肺炎になったとしても大多数の人は助かります。しかし、現代に生きる人々の多くは、「病気になってから治してもらえばよい」という考えよりは「病気にならないように予防したい」という考えの方が受け入れやすいのではないでしょうか。

◇予防のためワクチンを検討しましょう
現在、肺炎球菌感染症の主な予防はワクチンです。高齢者で定期接種として接種できるのはニューモバックス23というワクチンで、1回接種した後、5年経ったらもう1回接種してもよいことになっています(2回目は自費になります)。近年、プレベナー20という、生涯で1回接種のみでOKというワクチンも日本で承認されました。ただしこちらは定期接種ではなく任意接種ですので、興味がある人はかかりつけの先生に相談してみてください。
また、重症の侵襲性肺炎球菌感染症になった人は、肺炎球菌に感染する前にインフルエンザに感染していたほうがより重症だったとのデータがあることから、肺炎予防としての肺炎球菌ワクチン接種だけでなく、インフルエンザワクチンも接種することで、より予防効果が高まると考えられます。
今回、肺炎球菌ワクチン接種に興味を持った皆さんは、次のインフルエンザシーズン前のインフルエンザワクチン接種についても検討してみてはいかがでしょうか*2。

*1…厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数)の概況
【URL】https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf?utm_source=chatgpt.com.
*2…65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6報)
【URL】https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56.

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