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■「犬がいた季節」-F1日本GPに重なる青春物語-
かつて三重県立四日市高校に“住んでいた”実在の犬「コーシロー」を中心に、同校で学園生活を過ごした生徒たちの青春を描いた小説「犬がいた季節」(伊吹有喜著)をご存じでしょうか。
物語は、昭和・平成から令和へと移りゆく時代ごとに6つのエピソードで構成されており、その第2話が1991(平成3)年のF1日本グランプリを舞台とした「セナと走った日」です。
卒業を半年後に控えたF1ファンの2人の生徒が、夜明け前に自転車で四日市を出発し、20kmほど先の鈴鹿サーキットへ向かい、テント泊でF1日本グランプリを3日間観戦するのですが、彼らの興奮ぶりはもとより、実際のレース展開やマシン・ドライバーなど、当時の空気感が生き生きと描かれています。
そしてこのエピソードは、他の5話と共に最後に一つにつながり、温かく優しい大団円を迎えるのです。誰もが青春時代に抱いた、かけがえのない純粋な気持ちを思い出させる素晴らしい作品です。

中野能成(なかのよししげ)(鈴鹿モータースポーツ友の会事務局)