子育て 特集(1) 中学校給食の事業着手を当面延伸(2)

■Q2 市立病院の置かれている状況は?
経営改善に向け、地方独立行政法人へ

◇全国的に公立病院の経営が悪化
全国の公立病院は、非常に厳しい経営状況に直面しています。医師や看護師不足、人件費や物価の高騰などを背景に、令和4年度には約3割だった赤字の公立病院の割合が、令和5年度には約7割に急増しています。
名張市立病院も例外ではなく、経営安定化が急務となっています。コロナ禍後の患者数減少や、経費増大、看護師の離職に伴う入院患者の受入病床数制限などが経営を圧迫。令和7〜10年度までに、約12・8億円の資金不足が見込まれます。そうした中、市からの繰出金を、昨年11月の見込みより、この4年間で、さらに7・3億円増額する必要が生じてきました。

◇経営改善に向けた動き
この危機的な状況を克服し、地域医療の中核としての役割を果たし続けるため、市は市立病院の今年10月からの「地方独立行政法人化」に向けて準備を進めています。この法人化は、有識者などからなる「名張市立病院在り方検討委員会」の答申などを受けて決定しました。
運営主体が市から法人に変わることで、代表者が市長から現場に近い理事長に変わり、迅速な意思決定と柔軟な組織体制を生かした効率的な運営が可能となります。また、法人独自の就業規則や手当を導入することで、職員の働きがいを高め、人材確保の強化につながります。
すでに、令和7年4月以降、新たに3人の医師を採用し、来年度の新人看護師の応募が本年の約1・5倍に増加するなど、改善の兆しが見え始めています。また、「未来会議」や「病院改革委員会」といった職員主体の取組も立ち上がり、業務改善や組織強化につながっています。
現在、市立病院では、「中期計画」の策定作業を進めています。法人化後の第1期(10月〜令和10年度末)は、看護師確保を最優先課題とし、病床稼働率を段階的に回復したいと考えています。この期間中、市からの繰出金増額のほか、国の「病院事業債」の活用を進めつつ、法人の強み・特性を生かし、経営基盤を強化していきます。もちろん、法人化後も、公立病院として市民の命と健康を守ることが最優先であることは変わりありません。

■Q3 今後の財政状況の行方は?
財政健全化への道を、着実に一歩ずつ

◇恒常的な財源不足が背景に
名張市は、急増した人口が減少に転じ、恒常的に財源不足が生じています。こうした中、社会保障費や公共施設更新に必要な経費が増大。過去の借金が市財政を圧迫し、新たな支出への対応が難しい状況にあります。
中期財政試算(昨年11月)では、伊賀南部クリーンセンターの機器更新や中学校給食施設の整備などの投資事業が5年間で集中するなどし、対策を講じなければ、令和10年度に「財政再生団体」に陥る可能性を示しました。
財政健全化に向けて、「行財政改革プラン」(令和6〜14年度)により、歳入確保と歳出削減の取組を進めていて、令和7〜11年度で24・7億円の財源不足の縮減を見込みます(計画策定時)。令和7年度当初予算においては、歳出・歳入合わせて、財源不足を5・2億円縮減。このうち令和8年度以降も実施できる取組を検討し、さらに、年3・2億円の縮減を目指します。

◇「行財政改革プラン」の推進
「行財政改革プラン」の取組や市立病院への繰出金増額などを踏まえ、昨年11月策定の中期財政計画(令和6年度ローリング版)を5月時点で修正しました。その結果、令和11年度の累積赤字は32・6億円となり、「財政再生団体」への転落は回避できる見込みですが、予断を許さない状況にあります。
こうした中、実現を目指している中学校給食は、導入初年度に生じる6億円の負担(一般財源)に留まらず、2年目以降も年2〜3億円の経費が発生し続ける大規模事業です。中学校給食の事業に着手した後、仮に財政状況がさらに悪化した場合も、途中で中止することは困難となります。中期的に累積赤字が見込まれる中、今は財政健全化と、市立病院の経営安定化に向けた取組を着実に実行していくべきと判断しました。
「行財政改革プラン」の理念に掲げているのは、「変化を受け入れ、未来を共創する」。財政健全化の取組と合わせて、公民連携の推進、デジタルの積極的な活用、公共施設の最適化、外部人材の登用、人材育成など、人口減少社会における持続可能な行財政運営基盤の構築に、職員一丸となって取り組んでいきます。

■市民と市長の懇談会を開催
中学校給食の延伸や市立病院の経営改善、行財政改革など、市の現状と課題を市民の皆さんと共有し、ご意見や提言をいただく懇談会を開催します。懇談会は市長が参加し、8月下旬に市内5カ所で実施する予定です。詳しくは、広報なばり8月号でお知らせします。

私の思いをお伝えします
皆さんの声をお聴かせください

・市HPからも「市民の声」をお寄せください

◇詳しくはHPをご覧ください
・行財政改革プラン
・中期財政計画
・中学校給食・市立病院

■財政状況の見通し