- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県鳥羽市
- 広報紙名 : 広報とば 令和7年8月1日号
■戦争と言葉
「サイタ サイタ サクラガサイタ」
「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」
昭和8年に使用がはじまった『小学国語読本』の巻一のはじまりのフレーズです。
日本が国際連盟を脱退し、ドイツではヒトラーが政権を握ったこの時期、戦争の足音が近づいていました。
昭和16年3月には国民学校令が公布され、従来の小学校制度にかわり、初等科6年・高等科2年の8年を義務教育とした国民学校制度において、戦時体制に対応した教育を行うこととなりました。
戦争は言葉を用いた作品に大きな影を残していきました。
童謡『この道』『からたちの花』で馴染みのある詩人・北原白秋は、昭和13年のヒトラーユーゲント(ナチス・ドイツの青少年組織)の来日に際し、『万歳ヒットラー・ユーゲント』の作詞を手掛けました。
歌人・与謝野晶子は、日露戦争時に従軍した弟を嘆き『君死にたまふことなかれ』という詩を書いていますが、第一次世界大戦の際には、戦争を賛美する詩を生み出しています。
『道程』『知恵子抄』で有名な詩人・高村光太郎は、太平洋戦争中に『十二月八日』『真珠湾の日』などの戦争に関する詩を詠みました。戦後、戦争を賛美する詩を生み出したことを悔い、『わが詩をよみて人死に就けり』という作品の中で、自分の詩をよんだ戦地の同胞が死に立ち向かったのだとする内容を詠んでいます。
戦争が様々な作品に影響を及ぼし、その作品を手にした人々へも影響を与えていったのです。
『小学国語読本』の使用が開始された時から90年あまりが経過しました。終戦直後、教科書の中の軍事的・戦意高揚的な部分を墨で塗った教科書が使用されました。その後、現在に至るまで、教科書は改訂を重ねています。
戦争が人々に与える影響について、私たちは改めて考えていかなければなりません。
問合せ:市民課人権・市民交流係
【電話】25-1126