くらし 三重大学だより@海女研究センター vol.16

私は今年度からセンターに赴任してまいりました。今回は、私が初めて訪れた海女の祭り、三重県鳥羽市の菅島で開催された「しろんご祭り」についてレポートします。
しろんご祭りは、菅島に古くから伝わる神事で、海女が採ったアワビのつがい(メガイアワビ・クロアワビ)を神前に奉納し、海上の安全と大漁を祈願するものです。この伝統行事はおよそ700年前から続いているとされ、干潮の時間に合わせて、毎年7月の初旬に行われています。
当日、私は菅島港から遊歩道を歩いてしろんご浜へと向かいました。浜辺にたどり着くと、すでに多くの地元のかたがたや観光客が集まっており、祭りが地域に根ざした大切な行事であることが伝わってきました。
この日の干潮は8時30分。朝9時前になると、白髭神社の神職たちによる安全祈願と大漁祈願の神事が厳かに始まりました。続いて、色とりどりの大漁旗を掲げた漁船が海上をパレードし、会場は一気に華やかな雰囲気に包まれます。そして、いよいよ白い磯着姿の海女さんたちが、委員長の吹くほら貝の音を合図に、潮の引いた海へと一斉に入っていきます。その姿には長年この地で海とともに生きてきた人々の営みが感じられました。
やがて、つがいのアワビが採れたという知らせが会場に響き渡り、観客の間からは拍手と歓声が湧き起こりました。奉納海女がアワビを手にして白髭神社へと向かい、神前で再び神事が執り行われます。その中でアワビが捌かれ、供食される様子は、自然の恵みへの感謝と神とのつながりを深く感じさせるものでした。
今回、しろんご祭りに参加して、大きな学びと気づきを得ることができました。何百年と続く伝統を今も大切に守り継いでいる人々の姿からは、自然とともに生きることの尊さや、地域の絆の強さを改めて実感しました。
このような行事を通して、地域の歴史や文化、そして人と人とのつながりを実際に感じられたことは、私にとって非常に貴重な経験です。今後もこのような地域に根ざした行事に積極的に関わり、その魅力を多くの人に伝えていけるよう努めていきたいと思います。(准教授 菅沼文乃)

問合せ:三重大学海女研究センター(三重大学人文学部総務担当)
【電話】059-231-9196