文化 歴史の小窓ー学芸員のメッセージー236

●妙見堂(みょうけんどう)の鰐口(わにぐち)
三上山の中腹にはかつて妙見堂があり、妙見菩薩(ぼさつ)がまつられていました。
「妙見さん」と親しまれ、初午(はつうま)の日には、地元の人々がお手伝いをされるなど大切に守られてきました。しかし、令和6(2024)年3月に閉眼供養を行われ、その歴史に幕を閉じました。今回は、妙見堂で使われていた鰐口を紹介します。
鰐口とは、寺社仏閣の軒先につるされている梵音具(ぼんのんぐ)(音を鳴らす仏具)で、参拝者が打ち鳴らし、祈願する時に用いられます。同じく軒先から垂らしている布縄等を持って、参拝者は中央の「撞座(つきざ)」と呼ばれる部分を打ち鳴らします。この鰐口の両面には刻銘があり、「南無妙法蓮華経 南無妙見大菩薩」、「天保九戌年 四月吉旦 為子孫長久 目形六貫貮百目」「南無日蓮大菩薩 願主 八幡寺町 元■屋喜兵衛 京菓子屋 四十一才」などとあります。この鰐口が、天保9(1838)年4月に八幡寺町の京菓子屋である喜兵衛によって寄進されたことが読み取れます。三上の妙見堂が野洲の人々だけでなく、広く信仰されていたことを示す貴重な資料です。現在、野洲市歴史民俗博物館では、郷土史展「三上山の妙見さん」を開催しており、妙見堂ゆかりの資料を展示しています。この機会にぜひご覧ください。
※■…判読不能
(市史専門調査員 森 鮎子)

●郷土史展「三上山の妙見さん」
会期:開催中~5月11日(日)
※3月の休館日…月曜日、21日(金)
※市民は入館無料(運転免許証やげんきカード等をご提示ください。)

問い合わせ:歴史民俗博物館
【電話】587-4410【FAX】587-4413