くらし 【特集】未来へと続く森(2)

■東近江市100年の森づくりビジョン
本市では、この森里川湖のつながりによって育まれてきた森林を有効に活用していくため、令和元年度に「東近江市100年の森づくりビジョン」を策定し、100年先を見据えた健全な森づくりや資源利用を進めてきました。
森林の果たす役割は、カーボンニュートラルや生物多様性、防災、河川とのつながりなど多方面において一層重要となっています。このことから、これまでの取組を総括し、その成果や新たな課題を踏まえ、森林を取り巻く社会情勢の変化に対応しながら森づくりを推進していくため、令和7年3月に第2期計画として本ビジョンの改定を行いました。

▼東近江市100年の森づくり地域ワークショップ
ワークショップでは、地域住民や林業関係者、学識者、行政などの関係者が集まって、森と人の関わり方について課題を共有しながら、その解決に向け話し合い、将来の森づくりにいかしていく取組を行っています。地域に息づく歴史、文化も重要な地域資源と捉え、それらを次世代に引き継いでいけるよう話し合ったり、現地調査を行ったりしています。

▼多様な森林をいかした環境学習
本市では、体験を通じて子どもたちに豊かな自然環境と地域資源について伝えるため、里山での環境学習に取り組んでいます。里山をいかした環境学習施設である河辺いきものの森や布引の森の活動をはじめ、地域の自然に触れることで、自然の楽しさを知り、自分の住むまちの良さを感じてもらうことを目的に、認定こども園などのそばにある自然へ出かける里山保育を実施しています。里山保育は、年々実施園が増加し、近年にはこれを支えていただく市民団体が事業の継続と拡大に貢献しています。

▽東近江さとやまNannies
子どもたちに自然への関心を高めてもらいたい。東近江さとやまNanniesでは指導者を派遣し、感性が目覚め始める5歳児をターゲットに、歩き慣れた生活環境で植物や生き物を探しに出かける里山保育を実施しています。市内の認定こども園など10園で実施中です。全園実施に向けて指導者認定コース受講者を常時募集しています。

▼いきものの生息に配慮した森づくり
鈴鹿山脈には、多様な生物が生息しています。その代表的な生き物であるクマタカは、昔から森と人の関わりによってその生息環境が維持されてきました。近年では森と人とのつながりが希薄化したことにより、クマタカを含む生物たちの生息に影響が及ぶ中、森林資源の活用を図るとともに、生物多様性の保全を目指した東近江市生物多様性の保全を重視した森づくりプロジェクトを実施しています。

▼地域の魅力×観光エコツーリズムの推進
本市の地域資源を保全・活用しながら地域活性化につなげていくため、本市ではエコツーリズムの推進に取り組んでいます。平成28年度に設立した「東近江市エコツーリズム推進協議会」では、「エコツアー支援」「人材育成」「広報の実施」を3本柱に活動しています。これまで鈴鹿10座など市内に存在する多様な地域資源の発掘・磨き上げや、エコツアー(※)を通じて広く地域資源の魅力を理解してもらい保全につなげるガイドの養成、エコツアー情報誌「Higaeco(ヒガエコ)」の発行などの情報発信をしています。
※エコツアーとは、地域にある自然や歴史・文化などの地域資源を活用することにより、資源の保全や地域活性化につなげるツアーのこと。

■森づくりビジョンの実現に向けて
森づくりには、数十年以上、時には100年を超える長期的な視点を持ちながら着実に前へ進めていく施策展開が必要です。本ビジョンでは、100年先を見据えつつ、おおむね10年先を目指した森づくりのあるべき姿として次の3つの項目を掲げています。
(1)森里川湖のつながりをいかし、いきものの息吹が感じられる健全な森づくりが行われている。
(2)森林や山村のさまざまな資源が有効に活用され、地域で資源や資金が循環する仕組みが構築されている。
(3)地域住民や多様な主体が参画し、今後100年先を見通して地域の森づくりや資源利用について自ら考え、共に取り組んでいる。
鈴鹿の森を原点とした森林や森林文化の再認識・再構築を目指し、取り組んでいます。

▼自然を基盤とした森の文化
木地師の根源地とされる本市の小椋谷には、惟喬親王を木地師の職祖と仰ぐ伝承や全国の木地師を巡廻し統括した記録などがあり、木地師文化が色濃く残っています。また、かつては薪炭製造業や林業が盛んに行われ、伝統は「在来種の無農薬栽培と手摘みの政所茶」として茶栽培は現在も行われています。さらには、自然と人の営みが織りなす美しい山村景観が広がり、鈴鹿の森では豊かな自然を基盤とした「森の文化」が育まれてきました。

・日本遺産「琵琶湖とその水辺景観」…永源寺と奥永源寺の山村景観
・林業遺産 木地師文化発祥の地東近江市小椋谷…木地屋氏子狩帳
・政所茶
・正月神事の供物

■森の文化を後世に継承するために
森の文化は、豊かな自然と適切な人との関わりがあってこそ継承されます。このため、自然、民俗、木地師、歴史、景観と多岐にわたる森の文化資源調査を行い、鈴鹿の森を多角的に見ることで、その全体像を明らかにします。そして、人と自然との関わりを再構築することで、森の文化を継承することを目指します。
さらに、鈴鹿の森の魅力を知ってもらうために、現地でさまざまな観察会を開催するほか、市公式SNSや市ホームページで積極的に情報発信を行っていきます。

■鈴鹿の森フォトコンテスト
応募期間:6月2日(月)~12月31日(水)
市公式インスタグラムで募集しています。詳しくは市ホームページを確認してください。

問合せ:森と水政策課
【IP電話】050-5802-9021【FAX】0748-24-5692

問合せ:森の文化推進課
【IP電話】050-5802-9951【FAX】0748-24-1457