- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府高槻市
- 広報紙名 : 広報たかつき(たかつきDAYS) 令和7年4月号 No.1445
◆タイトル戦に挑む時の心と体。
濱田:これは個人的にも聞いてみたかったのですが、タイトル戦に臨むときの心境はどういったものなのですか?やはり会長でも緊張されるのでしょうか?
羽生:やっぱり独特の雰囲気がありますよね。関係者の方もたくさんいらっしゃいますし、前夜祭もあって、着物を着て対局することが気持ちの面ですごく引き締まるっていうところがあって。帯を締めて、袴をはくと、自然にそういう空気になります。
濱田:そうなんですね。全然緊張されているように見えないですけれど、本当にものすごいプレッシャーとか重みを背負って対局されていらっしゃるんでしょうね。
羽生:そうですね。考えすぎてもいけないですし、リラックスしすぎてもいけないので、ほどよい緊張感をどういうふうに保っていくのかが、大きな対局の時は大事なのかなと思っています。あんまり気合いが入りすぎてしまうと、ちょっと空回りしてしまうようなケースもあるので。あとタイトル戦の場合はかなり長時間行われるので、体調面で集中力や気力が維持できるかどうか。そういうことも含めて総合力が問われるところがあるのかなと思います。
濱田:心技体の充実が必要ということですね。会長の著書も何冊か拝読しまして、書かれていることが自分の実際の仕事にも役に立つと感じています。もちろん棋士の方の頭脳とは全然違いますが、論理を積み重ねていく順序とか。例えば将棋では、一手指すと、その手を生かさないといけませんよね。
羽生:そうですね。
濱田:それは現実の仕事でもあって。仕事をうまく進めるには、これまでの仕事を生かさなければなりませんが、これは将棋と同じだなと思うことが結構あります。それと「直感の7割が正しい」って書いていらっしゃいました。私もまずは直感を大事にするようにしています。
羽生:はい。迷った時に直感に戻るっていうことはよくあるんですね。いろいろたくさん考えてこんがらがってしまうとか、分からなくなってしまった時に、直感に戻って考えてる方が、いい結果になることが多いです。
◆高槻はいろいろな顔を持つ街。
濱田:会長は、令和5年に摂津峡の[山水館]で行われた王将戦で高槻に来られたと思います。高槻の街の印象はどうでしたか?
羽生:元々すごく大きい街というイメージがあったんですけど、実際に訪れて、すごくいろいろな顔を持つ街だなという印象を受けました。例えばベッドタウンというと典型的な街も結構あると思いますが、高槻はそういう感じじゃなくて、昔ながらの街並みも残ってるところもあり、新しく開発して発展してるところもあり、ちょっと離れると自然が多かったり。すごくいろんな側面を持つ街だなと思いました。
濱田:高槻の特徴を一瞬で捉えられていて、さすがです。その高槻に新しくできた[関西将棋会館]の印象はどう感じておられますか?
羽生:本当に駅からすぐ目の前に見える場所で。駅前のいい場所がこんなに広く空いてるのって滅多にないケースだと思うので、それもなんかすごくいいご縁をいただいたなと感じます。
濱田:市営バス車両の滞留場だった場所を利用できてよかったです。若い棋士の方に、もうだいぶ高槻に住んでいただいています。
羽生:高槻に続々と引っ越していっているようですね。これからは西の総本山ということで、棋士だけではなく将棋ファンの人も高槻に訪れてほしいですね。聖地巡礼のように訪れたいっていう流れができるように、日本将棋連盟もがんばってPRしていきます。
◆街の活性化や彩りへの可能性。
濱田:ありがとうございます!会長にもぜひまたお越しいただきたいです。
羽生:はい。対局でも行くことがあると思いますし、地元の皆さんと交流する機会が多くなると思います。
濱田:それはうれしいですね。われわれ高槻市ができることがあればおっしゃってください。
羽生:将棋っていろんな意味で可能性があると思っていて、街の活性化や発展とか、彩りとか。高槻市にはそれを体現する先駆者というか、モデルになっていただけたらありがたい。小学1年生全員への将棋の駒の配布など、いろんな形で市民の方に将棋文化を広げていただいています。そういった取り組みがあることで、住む人が生活しながら何か感じてもらえるものがあって、将棋ファンの輪が広がっていってほしいなと思っています。
濱田:どうぞ引き続き高槻のことをよろしくお願いいたします。最後に高槻市民に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
羽生:ご縁をいただきまして、[関西将棋会館]を高槻に移転することになりました。市民の皆さんとも、これから長いお付き合いになると思います。日本将棋連盟としても、高槻市の皆さんに何らかの形で貢献できるようにがんばっていきたいと思っていますし、棋士をはじめ多くの将棋関係者も多分街中を歩いていると思うので、温かく見守っていただき、末長くお付き合いいただければと思います。