- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府寝屋川市
- 広報紙名 : 広報ねやがわ 令和7年7月号
■バンドマンから転身 棚田の自然環境にひとめぼれ
専業農家
尾﨑 考(おざき こう)さん(42歳)
山の斜面にさまざまな形の棚田が点在する滋賀県大津市仰木の平尾地区。比叡山の麓に広がる自然環境にひかれて農薬や化学肥料を使わない野菜や果樹、米の栽培に取り組み、棚田を守る活動にも力を入れています。
◇30歳を前に農業の道へ 農薬不使用の栽培に挑む
農業とは無縁でしたが、転機となったのは友人の誘いで家庭菜園を始めた15年前のことです。当時、仕事をしながらロックバンドで活動。〝農業をするバンドマン〞としてラジオ番組にも出ていましたが、そのまま続けるか悩んでいました。
そんなときに無農薬、無肥料でリンゴを育てる農家を知りました。小さい頃に野山でザクロを見つけた体験をふと思い出し、「何もしなくても元気に育つんや」と納得。30歳を前に農薬不使用の栽培に挑戦しようと決めました。
◇専業農家として独立 耕作放棄地の棚田開墾
琵琶湖を臨む平尾地区は市街地から車で10数分。知人の紹介で8年前、地区で唯一の専業野菜農家として独立しました。担い手不足などで耕作されなくなった棚田も少なくなく、約10aの耕作放棄地を借りて開墾しました。
棚田の保全に取り組む地元のボランティア団体に入会。地元とのつながりが出来、多額の費用がかかる米作りも「農機具を貸すのでやってみないか」と誘われて始めました。
◇独学で栽培方法を習得 棚田ならではの苦労も
農薬に頼らない栽培方法は独学で習得しました。化学肥料を使用せず、農薬不使用のエサで放し飼いにされたニワトリの鶏ふん堆肥を使って野菜を栽培する徹底ぶり。米作りでは自然栽培に適した「農林22号」という品種を作付けし、田植え前には独自の水管理や農法で雑草を抑えています。
「労力は2倍、収量は半分」と言われる棚田ならではの苦労も多く、段差がある土手の草刈りは手間のかかる作業。雨が降ると、狭い水路はすぐに増水し、日ごろからの管理も気が抜けません。
◇在来・固定種40品目を栽培「次の世代に、この野菜を」
当初からレストランや保育所に納入していますが、コロナ禍を機にネット販売にも力を入れています。栽培面積は2haに拡大し、地域の環境に適した在来種・固定種約40品目を生産。「自慢のレンコンやニンジンは丸かじりでき、次の世代にこの野菜を届けたい」とアピールします。
〝棚田米〞の2〜3割は手刈りで収穫。天日干しや脱穀など昔ながらの方法で何倍もの労力がかかりますが、「稲の香りに包まれてやりがいを感じます。今後も安心してもらえる米や野菜を作りたい」と意欲を見せます。
◆私とふるさと
実家は香里北之町にあります。市立北小学校と第三中学校には、香里園駅前を抜けて通学していました。中学校では無線部に入部。アマチュア無線の資格を取って無線交信をしていましたが、卒業後は全く行っていません。
仕事の関係で大学を卒業後、5年ほどして枚方市に転居。大津市で農業を始めた当初は実家から通いながら棚田で耕作していました。香里園駅の周辺はマンションが建ち並び、街の様子もすっかり変わりました。