しごと 【特集】柏原市で働くという選択(1)

「人手不足」という言葉を耳にする機会が増えています。本市が令和6年7月から8月末にかけて市内企業に「中小企業・小規模企業振興に関するアンケート調査」を実施したところ、172社から回答があり、経営上の課題・困りごとについて、人手不足と回答した割合は42%でした。また、日本商工会議所が令和6年7月に全国47都道府県で実施した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」でも、人手が不足していると回答した企業は6割超でした。
では、就職活動を進めている大学生は就職しやすいのでしょうか。必ずしも就職しやすいとは言えず、特に留学生が日本で働きたいと思っても、希望する就職先に就けず、辛い思いをきっかけに帰国を余儀なくされるケースも少なくありません。また、日本人の学生であっても、就職先がなかなか決まらないケースが多く、依然として課題となっています。これらの状況の中、大学側も学生を支援するために、企業をどうやって見つけ就活生につなぐか、頭を悩ませているのが現状です。
本市では就職しやすい環境づくりに力を入れ、企業の人手不足の解消を目指しています。柏原市×大学×市内企業がタッグを組み、就活生向けの企業説明会の開催や、大学の授業に市も積極的に参加し共同で推進しています。今回、大学と連携した新しい取り組みを紹介します。

■柏原市×大学×市内企業による就職支援
◆「住み慣れた市で働きたい」
株式会社松徳
甄 煌テイ(※)(シン ヨクテイ)さん
(※)テイは女へんに亭。機種依存文字のため、正式表記は本紙をご覧ください。

とても流暢な日本語で取材に応じてくれたのは、本市在住で中国遼寧省(リョウネイショウ)出身の甄 煌テイ(シン ヨクテイ)さんです。大阪教育大学に留学し大学院卒業後、歴代外国人留学生の就職先として初めて、柏原市の企業に就職しました。就職した先は、株式会社松徳(ショウトク)(円明町)です。こちらは、さまざまな会社で製造された金属部品に熱処理を加え、最適な性能を引き出すという金属熱処理の専門企業です。そこで、品質検査員として日々さまざまな機器を駆使して活躍しています。
シンさんは大学院卒業後、母国には戻らず日本で就職したいと考え就職活動をしていましたが、就職先がなかなか見つからず苦労していました。そんな折、柏原市と大阪教育大学が共同で初めて開催した、留学生向けの市内企業説明会で同社を知る機会がありました。シンさんは、もともと日本刀に魅力を感じており、鉄を熱処理加工する事業内容に、日本刀の焼き入れに通じるものを感じ、仕事内容に興味が湧いたとのことです。また、面接時から会社の人たちが優しく接してくれたので、ここで頑張れると思い就職しました。実際、働いてみて想像と違うと感じたことはないですか?と質問すると、「事前に見学や業務内容も聞いていたので、入社後にギャップを感じたことはないです。分からないことはすぐ教えてくれるので働きやすいです」と笑顔で話してくれました。
外国人留学生が日本で就職するのが難しいと聞きます。何かアドバイスがありますか?と聞いたところ「大学院での私の専攻は数学でしたが、学んでいる学科にとらわれず、趣味など何か好きなモノ・コトを見つけ、好きなことにつながる仕事を探すことが大事だと思います」とメッセージをいただきました。

◆応援団のVoice
◇株式会社 松徳
弊社は今年で50周年を迎え、奈良に新工場を立てるなど事業も拡大をしています。しかし、なかなか人が集まらない状況です。そんな中、初めて大阪教育大学でプレゼンをする機会があり、業務内容に興味を持ったシンさんが入社を決めてくれました。最初は、大丈夫かなと心配していましたが、英語も日本語もできるのでコミュニケーションは問題なく、また頑張って働いている姿を見て不安もなくなり、留学生の入社につながるいい事例になってほしいと思っています。将来は、外国向けにも業務を拡大していきたいと考えているので、シンさんの今後の活躍に期待しています。今後も市と大学と共同で進められる活動は、地元企業としてどんどん協力していきたいと考えています。

◇国立大学法人 大阪教育大学
本学の留学生は1学年50名程度でそのうち、日本で就職する学生は約20名です。例年、就職が難航する卒業生がおり、就職先の開拓が課題でした。そうした中、柏原市と連携し、留学生向けの企業説明会を開催しました。当初は不安もありましたが、実際にご担当者とお会いすると、「ここなら安心して働ける」と感じられる企業ばかりで、自信を持って紹介できると確信しました。実際、シンさんから就職相談を受けた際には、説明会にご参加の企業におつなぎし、内定をいただくことができました。企業に対しては、学生の情報を丁寧に伝えたり、在留資格申請を大学がサポートしたり、不安の払拭に努めています。今後も、企業との連携の輪を広げ、安心して留学生を受け入れていただける環境づくりを進めたいです。