文化 ふじいでら歴史紀行 222

【アイセルシュラホールに大きな前方後円墳ができたよ! 1 プロローグ】
藤井寺市と羽曳野市には、大きな前方後円墳がたくさんあります。日本列島にあった倭(わ)という国の王の墓として、今から千六百年くらい前につくられました。その多くが世界遺産となっていますが、現在は樹木におおわれた緑の小高い丘のように見えます。
しかし、できたばかりの前方後円墳は、現在私たちが目にする姿とは違い、人工的な造形物としての外観を見せていました。実に多くの埴輪が立て並べられ、斜面には石が葺(ふ)かれていたのです。
アイセルシュラホールのリニューアルで、2階に世界遺産ガイダンスができました。前方後円墳が本来どのようなものなのか、多くの方にご覧いただき、親しんでいただくことを目的として、大きな前方後円墳のジオラマをつくりました。これは、高知県に本拠地を置く、株式会社奇想天外(きそうてんがい)、株式会社海洋堂高知に制作していただきました。奇想天外、海洋堂高知は、フィギュア制作で世界的に有名な海洋堂の関連会社で、さまざまな立体造形物の制作やミュージアムの運営などを行っています。
ジオラマの周囲の壁面には、藤井寺市を中心とした古墳のイラストマップ、古墳まめちしきなど、古墳にまつわるたくさんのイラストで分かりやすくあらわされています。そして、当時の人々や、水鳥形埴輪などが、かわいくキャラクター化され、子どもから大人まで親しみやすい内容になっています。これは、イラストレーター・絵本作家として著名な、モリナガ・ヨウさんに描いていただきました。前方後円墳のジオラマは、仲姫命陵(なかつひめのみことりょう)(仲津山(なかつやま))古墳をモデルとしています。藤井寺市内でいちばん大きな前方後円墳であること、5世紀代、最も盛んに古墳がつくられた時代の典型的な前方後円墳の形をしていることなどから、モデルに選ばれました。
この古墳は、墳丘の長さが実際には290メートルもあります。ジオラマは実物の40分の1のサイズとすることを考えていたのですが、墳丘長7.25メートル、濠をあらわす台部分まで含めると、実に長さ8メートルにもなります。長さはなんとか展示スペースに収まったのですが、横幅が40分の1でも5メートル以上になり、見学通路も確保できないことが分かりました。このため、壁側の一部を切り取り、切り取った部分の断面で、古墳の内部にある竪穴式石槨(たてあなしきせっかく)という人を葬った施設の様子を見れるようにしました。
また、築造当時の古墳のイメージを制作関係者で共有しておく必要があり、奈良県の馬見(うまみ)古墳群にある復元された前方後円墳、佐味田(さみだ)ナガレ山古墳、大阪府立近つ飛鳥博物館の古墳ジオラマやアイセルシュラホールに展示している埴輪などを、奇想天外の桐越(きりこし)さん、海洋堂高知の井上さん、モリナガ・ヨウさんと一緒に見てまわりました。皆さん熱心に観察を行われ、このことがジオラマ・イラスト制作につながりました。
(文化財保護課 新開 義夫)