しごと 【特集】介護のオシゴト(1)

超高齢化が進む日本で、社会に欠かせない存在となっているのが介護職です。高齢者の自宅での暮らしをサポートするヘルパーや、最適なケアプランを考えるケアマネジャー、地域全体を支える地域包括支援センター職員―今号は在宅介護に関係する3職種へのインタビューを通じて、仕事のやりがいや思いなど介護職の魅力をお届けします。

■介護の現状
高齢化により介護需要が高まる一方、支え手となる15〜64歳の生産年齢人口は大きく減少しています。兵庫県の試算では、高齢者の人口がピークを迎える2040年には、県内で約11.2万人の介護職員が必要とされています。
国は介護人材の不足を解消するため、ICTの導入による働きやすい職場環境づくりを進めています。また、介護事業者に支払われる介護報酬を高める制度である介護職員処遇改善加算が導入され、介護職員の給与は増加傾向にあります。

参考:兵庫県「介護職員需要の将来推計」(令和7年3月データ)を加工して作成

■INTERVIEW
(一社)兵庫県介護支援専門員協会 会長
山内知樹さん
プロフィール:大学卒業後、介護ヘルパーの資格を取得し、施設職員や在宅介護を経験。6年前に宝塚市でみつばウェルビーイング(株)を立ち上げ、代表取締役として会社経営を行う一方、ケアマネジャーとしても活動する。現在は市や県の介護支援専門員協会の会長も務める。

◇介護の仕事とは
日本では約97%の人が何かしらの介護を受けて亡くなると言われています。家族だけの介護は今ほとんど不可能で、多くの人が介護職員やケアマネジャーと出会って亡くなります。
介護職というのは本人の望む暮らしは何なのか、本人の幸せが何なのかということを最期の瞬間まで一緒に考える仕事です。

◇進化する介護の現場
私が働き出した30年前は介護業界の黎明期で、高齢者への待遇はひどい状況でしたが、少しずつ改善が進み、利用者の生活環境は本当に良くなりました。例えば入浴だと本人のスタイルや頻度に合わせて入れる施設も出てきていますし、ごはんも食べたい時に提供する施設もあって、本人の意向に沿った支援ができています。
あまり知られていませんが、海外と比べても日本の介護のレベルは高いんですよ。本人の尊厳を大事にしながら、本人に合った支援ができています。
働く側の話をすると、介護と言えば重労働で苦しい、みたいな時代もありましたが、機械化が進んで体を抱えるような重労働はほとんどなくなりました。今は全く抱えない介護「ノーリフト」が、ベストだと言われています。

◇人生は喪失体験の連続
年を取るということは「喪失体験」の連続なんです。まず仕事や役割が減り、知人、友人、パートナーが亡くなり…周りの人がどんどん亡くなっていくんですよね。
人っていうのは知人に自分を投影して、自分の存在を認知する生き物。だから自分をよく知っている人がいなくなると、自分が欠けていくように感じるから辛いんです。周囲の人がいなくなる中で、自分自身も体が思うように動かなくなっていく。人生の中でも本当にしんどい状況で死ななきゃいけないっていうのが人間なんですよ。

◇介護が叶える人生の幸せ
喪失が続く人生の最後に、「あなたと一緒に残りの人生、あなたの幸せを一緒に考えて、あなたのできないことを一緒にやりながら、できることも喜んで支えます」と、一緒の時間を過ごしていくのが介護職だと思うんですよ。こんなに素晴らしい仕事はないんじゃないかと思うし、社会が成熟してきている証しじゃないかなと思っています。
なので、社会にはぜひこの仕事を大事にしてほしいし、働いている人もプライドを持って、素晴らしい仕事をしているんだと実感しながら働いてもらいたいです。

◇若い人へのメッセージ
介護職ほど、人生や自分の生きる価値を、こんなに真剣に教えてもらえる仕事はないんじゃないかなと思うんですよね。
人にはそれぞれドラマがあって、どんな人にも感動できる物語があり、関わっていると色んな話が聞ける。その人の人生を、自分と照らし合わせて、生きる価値っていうものに向き合うことができるのは介護の仕事の魅力だし、若い人にこそ体験してほしいと願いますね。

死と向き合う中で見えてきたものや実体験に基づく介護職の魅力など、誌面には収まりきらなかったインタビューを市公式noteで公開しています。ぜひご覧ください。