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■大原神社の彫刻下絵
丹波市文化財保護審議会委員 山内順子

令和5年4月の広報たんばで紹介しました「中井権次家(なかいごんじけ)」は、柏原町に住み、代々社寺などの建物を飾る彫刻を家業としていました。中井権次家11代目にあたる光夫(みつお)さんが、関連史料を市に寄託しました。
この史料を調査したところ、新たに彫刻の図案をあらかじめ描いた彫刻下絵2枚が見つかりました。(写真1と2)大きさは幅48cm長さ96cmで、牡丹の花と孔雀が描かれています。雌は口を閉じ、雄は口を開いており、並べると一対になることがわかります。しかし、どこの社寺の下絵であるかを記した文字はありませんでした。
社寺彫刻研究家白石雅之(しらいしまさゆき)氏に聞いたところ、市島町徳尾に鎮座する大原神社本殿脇障子の彫刻下絵ではないかとの見解でした。そこで筆者は、実際の彫刻と見比べるとともに、脇障子の大きさを計測しました。すると、彫刻下絵と図柄が一致、サイズも同じだったのです。(写真3と4)
中井権次家の彫刻下絵は、原則原寸大で描かれることと、実際の右側の脇障子には「中井権次橘正貞」と銘があり、中井権次家が脇障子に孔雀一対を彫った社寺がほかに無いことから、今回発見された2枚の彫刻下絵は大原神社のために中井権次が描いたものであるという結論にいたりました。
※写真は本紙をご確認ください。

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