講座 新温泉町文化会館だより

■『同和問題』をテーマに「第4回人権講座」を開催
文化会館では、同和問題をはじめ、あらゆる差別や人権侵害をなくし、お互いの人権を大切にするまちづくりを目指して、年5回の人権講座を実施しています。9月24日(水)に第4回目の人権講座を開催しました。

▽DVD「部落の歴史を読み解く~近世の身分制度と被差別民~」を視聴
今回の学習テーマは『同和問題』です。啓発ビデオ「部落の歴史を読み解く~近世の身分制度と被差別民~」を視聴し、その後、町人権啓発指導員の日浦智さん(浜坂公民館長)の講話で学習を深めました。
徳川政権が権力を握っていた近世には身分制度がしかれ、支配する身分である武士と支配される身分である平民(町人、農民など)、賤民(かわた、長吏、三昧聖など)の間で厳しい身分差別が存在していました。上方(大坂)と江戸(東京)に居住していた被差別民について、文献や絵図などを通して詳しく見ていきます。
また、被差別身分の人々は、厳しい身分差別を受けていただけではなく、当時の社会にとって必要不可欠な役目もおこなっていました。川田、長吏、三昧聖の人々はどのような役目を担っていたのでしょうか。上方(大坂)と江戸(東京)と比較しながら具体的に見ていきます。

▽日浦智さん(人権啓発指導員)の講話
今日のDVDは2部構成になっていました。前半は「近世の身分制度と差別」、後半は「被差別民の役目と生活」です。
江戸時代の少し前の戦国時代には農業の生産力が向上し村の自治が進化し、村が年貢をとりまとめ領主に納める仕組みが完成しました。そして、豊臣秀吉による検地が始まり、どの土地がどの村に属するか決められ各村の生産高が決定され、それに見合う年貢を毎年納めなければならなくなりました。これを「村切り」と言いました。
しかし、この村切りの際に「かわた」身分だけは独立した村とは認められず、近くの「本村」の一部としての「枝郷」とか「枝村」として位置づけられ、年貢などは「本村」がまとめて領主に納めることになりました。
また、農業に必要な用水や共有地の利用についても「かわた」身分には制限が加えられることが度々ありました。さらに、訴えを起こす場合でも本村を通してしか訴状を作れませんでした。死んだ後も、「かわた」身分は、本村とは別の墓を作って埋葬するのが常でした。
江戸時代の大坂には市内の中心地から外れた、しかも低く湿った場所に「渡辺村」というかわた身分の人々が住んでいた村がありました。かわた身分のほかにも非人身分の人々が住んでいた地区が4か所ありました。そこは、天王寺、鳶田、道頓堀、天満で「四ケ所」と呼ばれ、市中から離れた場所にありましたがいずれも居住環境の悪い場所に強制移住させられていたのです。
他にも、大坂市中には葬儀、火葬、墓地の管理などの業務を担っていた「三昧聖」と呼ばれた被差別民がいました。彼らは、人の死に対する「けがれ」という考え方から差別の対象とされていました。「三昧聖」は墓地の近くで「坊舎」と呼ばれた家屋に集団で居住していましたが、やはり市中から離れた場所に置かれていました。
身分制度は、江戸時代を通じて幕府や各藩で厳しく行われてきました。岡山藩では税制の立て直しのために改革を行いましたが、その際、かわた身分の人々だけ『家紋のついていない渋染めか藍染で染めた衣服に限る』と命じました。これに対して、かわた身分の人々は激しく抵抗しこの命令を撤廃させました。これが「渋染一揆」と呼ばれたものでした。この一揆のほかにも各地で生活を守る戦いや、差別政策に反対する戦いが展開されました。
このように、各地で展開された被差別民衆の戦いの意義は大きく、私たちが忘れてはならない史実であると言えます。
次に「被差別民の役目と生活」を見ていきます。
大坂の「渡辺村」のかわた身分の人々は普段、犯罪人の処刑時の刑場の準備や後片づけ、死体の処理、火事の際の火消しなどを行っていましたが、他にも、重要な役目の一つに太鼓づくりや太鼓の皮の張替えがありました。かわた身分の人たちには牛馬が死んだ場合に無償で引き取ることができる権利(草場権)が与えられ集められた死牛馬の皮をなめし、太鼓の皮の張替えや雪駄づくりに利用したのです。
他にも、芸能や冠婚葬祭時のお祝い事やお祓い事、死者の弔い事などにも従事していました。さらに、江戸時代の医学にも被差別民は深く係わっていました。杉田玄白が刊行した「解体新書」は「エタの虎松」の祖父の力を借りてまとめ上げたものでした。
このように、被差別民が果たした役割は実に多様で、しかも大きな意味があったといえます。
しかしながら、このように社会に大きく貢献した人々に対する差別は社会に根強く存在していました。このような史実は、今現在、私たちが部落差別問題を考える上で大変重要な意味を持っているといえます。
なぜ、このような部落差別が始まったのか、そして、なぜ、今も厳然と続いているのか、私たち一人ひとりが、真実を学習し、何が正しいのかを追求していくことが重要ではないでしょうか。

問合せ:新温泉町文化会館
【電話】82-3328