健康 雲南病院だより

■お口の中にできる「がん」をご存知ですか?
歯科口腔外科 部長 小池尚史(こいけたかし)

お口の二大疾患と言えば、虫歯(う蝕(しょく))と歯槽膿漏(歯周病)であり、皆さんもイメージしやすい疾患だと思います。しかし、私たちの口の中には、いわゆる口内炎と呼ばれるものをはじめ、さまざまな粘膜疾患も生じます。一般的に短期間で治る口内炎であれば心配ないですが、長期間治らないと思っていたら「口腔がん」であったということもあります。今回、「口腔がん」や注意すべき口腔粘膜の疾患について簡単に説明しようと思います。

■口腔がんとは?
お口の中にも「がん」ができることをご存知でしょうか。「口の中にがんができるのですか」と言われることがよくあります。お口の中というのは、鏡の前に立てば簡単に見ることができるため、変化には気付きやすい場所です。しかし、「ただの口内炎だと思っていた」、「そのうち治ると思っていた」、「痛みがないから放っておいた」などの理由で、発見が遅れることが多いです。日本では口腔がんはがん全体の約2%に過ぎませんが、毎年約2万人以上が口腔・咽頭がんにかかり、約7千人以上が死亡しています。実は患者数は増加傾向にある疾患なのですが、肺がんや大腸がんに比べて認知度が低く、医療機関への受診が遅れることが多いとされています。一方、早期発見ができれば90%以上が治る見込みがあり、予後の良いがんの一つとされています。

■口腔がんの症状
口腔がんは、がんができた部分の粘膜の色が赤や白に変化したり、形が変わったり、しこりを感じるようになります。進行しなければ、痛みを伴わないことも多く、特に早期がんでは口内炎との区別が困難なことがありますが、なかなか治らない口内炎には注意が必要です。また、進行するとリンパ節への転移や全身の臓器への転移も認めるようになります。

■注意すべきポイント
口腔がんのリスク因子としては、喫煙、飲酒、入れ歯等の慢性的な刺激、口腔粘膜の炎症などがあります。普段から、かかりつけ歯科医院で歯のメンテナンスを受けることが重要です(表1)。また、口腔内は、鏡などを使えば誰でも自分自身で簡単に見ることができる場所です。定期的な歯科受診にあわせて、日々のセルフチェックも重要です。赤色や白色といった色の変化はないでしょうか、粘膜の表面の形が変化していないでしょうか、お口のチェック、今日から始めましょう(表2)。

■最後に
口腔がんは早期に発見することが可能な疾患です。お口の中で気になることがあれば、まずは、かかりつけの歯科医院など医療機関にご相談ください。必要に応じて雲南市立病院歯科口腔外科との連携が可能です。担当医の小池尚史は(公社)日本口腔外科学会専門医と(一社)日本がん治療認定医機構がん治療認定医を取得しており、口腔の疾患に対する適切な判断をいたします。

(表1)口腔がんを予防するための注意点
・口の中を清潔に保つ
・虫歯や歯周病は治療する
・合わない入れ歯や詰め物は治療する
・禁煙をする
・アルコールを控える
・定期的に歯科を受診する

(表2)口腔がん早期発見のためのチェック項目
・2週間以上治らない口内炎がある
・舌や歯ぐきなどの粘膜が白や赤に変色している
・口の中に硬いしこりが触れる
・口の粘膜から出血しやすい
・口の粘膜がただれている
・口の中の傷がなかなか治らない