子育て 《特集》不登校、子どもたちのSOS。(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 山口県下関市
- 広報紙名 : 市報しものせき 令和7年8月号
■不登校の現状
夏休み明けは、子どもたちが不登校になりやすい時期。「学校に行きたくない」という気持ちは、誰もが一度は経験したことがあるはず。
34万6,482人――これは、令和5年度に不登校となった全国の小・中学生の人数です。文部科学省の調査によると、不登校は11年連続で増加し、過去最多を更新。下関市でも、同様の傾向が見られます。
ICTの進展により情報があふれ、家庭や地域の在り方も様変わりし、社会が多様化・複雑化する中で、子どもたちが抱える悩みや問題も、一層複雑になっています。ときに本人や保護者でさえ、問題の本質を言葉にできないこともあるのです。
不登校が増える背景には、さまざまな要因が絡み合っています。
■不登校が増える要因として考えられる社会的背景
(1)子どもを取り巻く社会環境の変化
核家族化や共働き家庭の増加により、子どもが家庭で安心して受け止めてもらえる機会が減少していることが指摘されています。
地域とのつながりも希薄になり、子どもの居場所が少なくなっています。
(2)学校の仕組みと多様性とのズレ
世の中の価値観が変化し、多様性が認められるようになった中で、みんな一緒の登校、一律の時間割、全員が教室で同じ授業を受けるスタイルに馴染めない子どもが増えています。
発達特性や繊細さを持つ子どもが、学校生活に適応できず、苦しみを抱えることがあるようです。
(3)SNSやネット社会によるストレスの増加
ネット社会では、友人関係が学校の外まで24時間続くようになり、対人ストレスが常に持ち越される状況となっています。他者との比較、承認欲求、誹謗中傷など、精神的に疲弊する要因が多くなっています。
(4)社会全体の「生きづらさ」
働く大人のストレスや生きづらさが、家庭に影響することもあるようです。「我慢してでも行くのが当然」という価値観が揺らぎ、「自分らしくいたい」「苦しいなら距離をとる」という選択が少しずつ認められるようになってきた状況もあります。
・不登校の児童生徒の出現率の推移(1,000人当たりの不登校児童生徒数)
※詳細は、本紙またはPDF版をご覧ください。
出典:文部科学省、下関市
※不登校の要因や背景は、上記以外にもさまざま考えられており、これらが複雑に絡み合うことで問題を見えにくくしています。
子ども自身も気付かないまま、苦しみを抱えていることがあります。
■子どもたちの心への寄り添いを
不登校は、「子どもだけの問題」ではありません。社会全体の変化、大人の在り方、教育制度の構造的な課題が映し出された現象ともいえます。だからこそ、誰もが「自分のペースで学び、生きられる社会」を目指すことが求められています。
不登校の子どもたちは、怠けているわけではありません。「学校に行きたい」と思っている子どもがほとんどです。でも、行けない――。その気持ちに寄り添わなければ、心も通じず、ますます状況を悪化させてしまいます。
焦らず、無理せず、子どもたちが大人になってから自立して生きていけるように――。本市では、多様な背景を持つ子どもたちに応じた複数の学びの選択肢を用意しています。その具体的な取り組みを紹介します。