くらし 人権コラム No.137 つながり ぬくもり

『予測と想定外』

さる昔、祖父母から「雷が鳴ると梅雨が明ける」や「燕が低く飛ぶと雨になる」などとよく聞いていました。農業や漁業の従事者は、夕焼け、雲の流れ、風向き、風力、白波の立ち方などの自然を観察して天候を予測し、仕事の段取り(手順)を決めていました。
近年は、コンピューターやAI(人工知能)の開発が劇的に進歩しており、これらを利用することで、自然現象の変化の予測精度は確実に向上しました。台風が発生すればその進路を、雨が降り続くと線状降水帯の起きる場所を高い確率で予測できるようになり、その予測を基にした生活設計や安全確保のための施策がなされています。
過日、日向灘を震源とする大きな地震が発生しました。南海トラフ地震は、30年以内に発生する確率が70~80%と予測されています。これは、いつ起きてもおかしくないという予測で、さらに高い確率の地震予測はまだ先の事のようです。
私たちは、人生の過程でなんの前触れもなく、想定外の重大な事柄に遭遇することがありますが、この遭遇の事柄を「運命」と呼ぶことがあります。大谷選手の活躍を見ようと何万人もの野球ファンが球場に集まります。その時、大谷選手の打った記念すべきホームランボールをキャッチする運命に出会った人の喜びには想像を絶するものがあるでしょう。能登半島では、令和六年一月に想定外の大地震により未曽有の被害が発生しました。そして同年九月には猛烈な集中豪雨が襲いました。この集中豪雨は予測されていましたが、その被害が大地震の規模を上回るほどとは想定外だったのではないでしょうか。半年で二度の想定外の災害に遭遇された能登の皆様の心痛は計り知れません。
想定外の喜びや悲しみの運命的な事案には、その軽度の差はあれども誰もが体験をします。
喜びの場合はともかく、悲しみの場合は、歴史上にも火山の噴火、疫病の流行、大飢饉など、この世の地獄ともいえる運命的な事案が発生しています。
私たちの祖先はその苦境を力を合わせて乗り越えてこられました。
ヒトの命を未来につなぎ続けることが、今、そこに生きている人たちに与えられた使命であることを潜在的に共有していたからではないでしょうか。近年の災害復旧にボランティアとして多くの人が参加している姿に、ヒトの命をつなぐ使命感を脈々と受け継いでいる共同体であることに誇りを感じています。
この使命感を、だれの心身を傷つけることもないように深化させて、次世代につなぐことが私たちに与えられた使命ではないでしょうか。

平生町人権教育推進協議会
(事務局:町教育委員会)