文化 ウミガメ News Letter No.47

■1頭のアカウミガメ
今年の大浜海岸では、7回の上陸と5回の産卵を確認しました。それは産卵個体としては小型の1頭のアカウミガメによって行われました。一般的に1頭のウミガメが1シーズンに4~5回の産卵を行うことは珍しいことではありません。しかし、この1頭だけが上陸産卵している現状は、大浜海岸の上陸産卵が安定しているとは言えない状況を示しています。加えて、今回、産卵したアカウミガメは甲長77.6cmと産卵個体としては小型で、産卵の様子から経験の浅さがうかがえました。産卵のための穴を掘る動作にはぎこちなさがあり、上陸を報告して頂いた監視員さんたちと「ひょっとして初産かな?」などと話していました。そのぎこちなさは巣穴の深さにも表れていました。通常40~60cmの深さに掘られる巣穴が、この母ガメの場合は20~40cmと浅い状態でした。そして、浅く産み落とされた卵は、猛暑が続いた今年、その影響を強く受けたと考えられます。孵化率調査の結果、6月15日に産卵された135個のうち、孵化したのはわずか12個でした。また、孵化しなかった卵の多くは胚(ウミガメの体になる部分)がなく、特に3回目以降では殆どの卵に胚がない状態でした。このことは、今回の母ガメが初産で、まだ体内で卵を作り出す卵巣の機能が安定していなかった可能性があります。経験不足と猛暑という2つの要因が、孵化率の低下に影響を与えたと考えられます。しかし、この小さな母ガメの挑戦を無駄にはしたくありません。今後もウミガメが産卵しやすい環境の維持と向上に努めたいと思います。「ウミガメの聖地」を守るためには、産卵地である大浜海岸の環境保全が不可欠です。この小さな母ガメが数年後に再び大浜海岸に戻り、今度はより多くの子ガメ達が海に旅立つことを期待し、皆様の温かいご支援とご理解をお願いいたします。
館長:平手康市

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〒779-2304徳島県海部郡美波町日和佐浦369うみがめ博物館カレッタ「質問係」

■Question
砂浜はどのようにして出来ますか?

■Answer
川や海で細かくくだかれた岩石などが長い年月をかけて、波、流れ、風などの影響を受け海岸に寄せ集まった地形が砂浜です。その為、砂浜の周辺で地形を変えてしまうと、波、流れ、風などの強さや向きが変り、砂浜の形が変わったり、無くなったりすることが各地で報告されています。