- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県上島町
- 広報紙名 : 広報かみじま 2025年4月号
■農業と天気
農業は自然相手の生産活動のため、技術の進歩した今日でも作物の出来不出来は天気の影響を大きく受けます。身近な話題では夏の高温、秋の天候不順により野菜の不作でキャベツなどの秋冬野菜が高騰しました。今回は昨年の天気を振り返り、柑橘への影響について考察しました。
1 平均気温と降水量
気象庁は全国に気象観測地を設けて気象データの蓄積を行っています(アメダスポイント)。上島町付近には広島県生口島と愛媛県大三島に観測ポイントがあります。観測データはパソコンやスマホから見ることができ、過去30年の平年値と今年の比較もできます(図1参照)。
昨年の天気を振り返ると、暑い夏から11月ころまで平年を上回る気温が続き、12月から平年並みになりましたが12月下旬~2月にかけて周期的な寒波により最低気温が氷点下を下回る期間もありました。降水量は、6月~7月と10月に降雨が集中し、近年、日本のどこかで豪雨災害が発生するなど短期間に降雨が多い時期がありました。あらためて防災の備えを考えさせられます。一方、7月~9月、11月~2月は極端に雨が少なく、まるで雨季と乾季のような雨の降り方で温暖化の影響かもしれません。
2 柑橘の作柄と天気
今年の温州みかんの生産量は、天気の直接の影響ではなく全国的に裏年(収穫量が少ない年回り)でした。今年の天気から柑橘類の生育への影響について考えてみました。
(1)夏期の高温・少雨
8月下旬頃から9月にかけて果実が黄色くなる日焼け果(写真1)が発生しました。果実の水分不足と強い日差しが原因で果皮のやけど症状で、症状が強いと果皮が固くなり果肉にす上がり(水分不足)が生じて品質を低下させます。
(2)秋季の高温、少雨
柑橘類の多くは、成熟期の秋から冬季の低温を感じて、果実の緑色素がオレンジ色(黄色)に変化します。今年は秋の気温が平年よりも高く着色が遅れ、12月に気温が平年並に下がったため中晩柑の一部で緑色が抜けきらない着色不良果が見られました。また、秋期の土壌乾燥は糖度上昇に働きますが、今年は少雨・乾燥にもかかわらず糖度の低い品種が多く、秋季の気温上昇による果実への養分集積が少なかったと考えられました。甘平では成熟期の長期間の乾燥により、果実水分が樹に収奪されたと考えられる硬化症(写真2)の発生が多く見られました。
※詳細は本紙をご覧ください。
(3)冬季の低温(長時間の氷点下)
柑橘類は成熟期に氷点下の気温が数時間続くと、果実の凍結による苦み果が発生する品種(せとか、八朔等)や果実の軟化被害(レモン等)が見られます。今年もごくわずかに発生しました。
3 最後に
前記以外に天気の影響により病害虫被害の増加や温暖化により柑橘の栽培産地が北上すると極端な予測をする研究者もいます。すぐにそうした環境になるとは考えにくいですが、気象にも関心を持って農業を行わなければならないと思う最近の空模様です。