文化 佐田岬民俗ノート 245

「タカキビの話」
この夏、佐田岬半島ミュージアム横にあるスマイルパークに佐田岬みつけ隊員が植えたタカキビ(イネ科)が背を伸ばしています。このタカキビ、かつては半島各地で栽培・収穫され食べられていました。タカキビモチなどといって、餅と一緒に搗いて食べることが多かったようです。
二名津地区でも、米があまり手に入らなかった時代、タカキビモチをよく作っていました。収穫したタカキビの穂をアワビの殻を使ってそぎ落とし、臼で挽いてさらに細かくしました。これを蒸して、餅と一緒に搗いていたそうです。さらに、搗いた餅は水甕の中に入れ、ミズモチにし、保存食として長い間食べていました。タカキビモチはタカキビの粒々した感触が舌に残っていたそうです。どんなお味だったのでしょうか。なお、ミズモチに使用する水甕の水は「カン(寒)の水」といって、冬の寒いころに汲んだ水を使用していました。
また、伊方越地区では年に1回お正月が終わった頃、近所で集まって一緒にヒエ・アワ・タカキビなどの餅をついていました。これもミズモチにして、夏ごろまで食べていたそうです。
現在ではタカキビを食べる人は少なくなりましたが、田んぼが少ない佐田岬半島らしい食生活の一つです。
協力/小林文夫さん、辻公正さん