- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県筑紫野市
- 広報紙名 : 広報ちくしの 令和7年9月号
■其の百十七
高級(こうきゅう)な文房具(ぶんぼうぐ)「円面硯(えんめんけん)」
現在、一般的な硯(すずり)といえば、石製の黒くて四角いものが主流ですが、飛鳥・奈良時代は陶製の硯が主流でした。
その頃、文字の読み書きができたのは、貴族、役人などの限られた人たちだけでした。そのため文字を書く道具も貴重な品であったと考えられます。その中でも硯は円形・方形・鳥・亀・獣などさまざまな形がありました。また、日常使う須恵器を再利用した硯(転用硯)もありました。
転用硯は比較的多く出土しており、おそらく下級の役人などが使用したのでしょう。一方、出土例が少なく珍しいのが、「円面硯」です。円面硯は、文字通り円形の硯で、硯の下の土台は透かしを施したものや、動物の脚をモチーフにしたものなどがあり、手が込んだ造りの高級品で、上級の役人や貴族たちが使用したものと考えられます。
このようなデザイン性に富んだ形の硯は使い手の経済力そのものを表しているのかもしれません。
問合せ:文化財課