くらし 《地域特集》kon-ne 平戸

■大好きな町を知ってほしい
平戸市早福町 民宿「早福荘」女将
里崎 雪(さとざき ゆき)さん

豊かな海に恵まれた長崎県には「釣りの聖地」と呼ばれる地域が多数あります。そんな「聖地」の一つである平戸市早福(はいふく)町には、釣り人を元気に迎える民宿の女将さんがいます。
平戸大橋から車で約40分。山あいのトンネルを抜けると、三方を山に囲まれた漁港が見えてきます。平戸島の南西部に位置する早福町は、「釣りの聖地」として全国から釣り客が訪れています。
早福町で唯一の民宿「早福荘」の女将、里崎雪さんは青森県出身。東京で24年間、事務員や保険外交員として働いていましたが、16年ほど前に夫の出身地である同町に移住してきました。「最初はすごいへき地に来たと思っていましたが、町の人がみんな温かく、すぐ好きになりました」と笑顔で話します。
夏場のアラ、秋口のヒラマサなど釣りのシーズンには多くの釣り客が早福荘を利用しており、遠くは北海道からも訪れます。繁忙期は午前2時に起床して朝食を準備し、お客さんを送り出した後は掃除や買い出しに追われますが、お客さんが大物を釣って帰ってくると、その疲れも吹き飛ぶそうです。
魚や野菜など平戸の旬の食材にこだわった食事も好評で、リピーターも多い早福荘。「新型コロナ禍の際は新潟県のお客さんから『頑張って』と応援する手紙をいただくなど、人との出会いや、つながりにやりがいを感じています」
早福町は国の天然記念物に指定されている礫(つぶて)岩や阿値賀(あじか)島のほか、野崎島(小値賀町)や宇久島(佐世保市)を望める風光明媚な土地。東部の佐志岳や南部の屏風岳は、トレッキングコースとしても人気です。こうした平戸市南部の魅力を多くの人に伝えようと、里崎さんはこれまでに町内で音楽イベントを開催するほか、所属する地元商工会議所では観光振興や地域活性化に取り組んでおり、「多くの人に早福の魅力を知ってもらい、訪れてほしい」と意気込みます。
早福町につながるトンネル出口に建つ開通記念の石碑には、こんな言葉が刻まれています。「共に仲良く正しく生きて、信じていると誰かがみまもり認めてくれる」―。「この言葉が大好きで、まさに早福を表していて、この言葉を見ると、改めて『そうだよね』と町の魅力を実感します」と里崎さん。大好きな町で、今日も全国からの訪問客を笑顔で迎えています。

▽平戸のジャンガラ
平戸藩に伝わる念仏踊りで、江戸時代初期には存在したといわれています。起源は定かではなく、名称は鉦(かね)と太鼓の音色に由来。盆の時期に市内各地の神社仏閣、名所などで披露される夏の風物詩。国指定の無形民俗文化財。

▽生月サンセットウェイ
生月島西側の南北に走る全長10キロ超の道路。日本風景街道「ながさきサンセットロード」のルートでもあります。ほぼ中間にある鷹ノ巣トンネルを抜けると、高さ約80メートルの断崖と東シナ海が両側に迫ります。大バエ灯台から望む夕日は絶景。

◆平戸特産のあごを希少な缶詰に
▽平戸観光協会
平戸観光協会が試行錯誤を経て、昨年9月に開発した「あご缶」。1年のうち夏から秋にかけての約1カ月半のみ水揚げされるあごの鮮度を保ったまま軟らかく加工し、生月のしょうゆで味付けしています。あごの長期保存が可能な商品は全国的にも珍しいです。

ところ:平戸市崎方町868-1
営業:月~金曜 8時30分~17時30分
※祝日を除く
※「あご缶」の主な販売店舗は、平戸瀬戸市場、ひらど新鮮市場、長崎お土産すみや長崎街道かもめ市場店など
【電話】0950-22-306

◆満月夜の塩を使った絶品スイーツ
▽キャラメル専門店 firando(フィランド)
ポルトガルから平戸島に伝来した西洋菓子をモチーフにした塩生キャラメル「MANGETSU(まんげつ)」。しぼりたての県産生乳を丁寧に炊き上げ、平戸の海で満月の夜に海水をくみ上げてつくる塩をアクセントに使用。舌の温度でとろける濃厚な味わいは格別です。

ところ:平戸市津吉町310-2
営業:月~金曜 9時~17時
※祝日を除く、冬季・夏季休業あり
※駐車場あり
【電話】0950-27-1701

◆地域のニューストピックを紹介
▽県内初の公共ライドシェア
平戸観光協会と平戸市などが連携し、観光客を対象とした「公共ライドシェア」の実証運行を昨年11月、県内で初めて開始しました。運行エリアは同市内全域と長崎空港間の往復。乗用車1台を使用し、ドライバーは市内の観光、公共交通の事業者が務めています。

◆[表紙のコト] 平戸オランダ商館
平戸オランダ商館は1609年、オランダ東インド会社(VOC)が現在の崎方町一帯に設置。幕府の鎖国政策で1640年に取り壊されたが、2011年に2階建て石造倉庫を平戸市が復元。海外貿易時代の資料や平戸藩主松浦家に伝来する文化財などが展示されています。「平戸が西洋貿易の先駆けの場所だったと感じることができます。周囲には城下町の雰囲気も息づいており、散策して西洋とミックスした文化を楽しんでほしいです(岡山館長)」。

ところ:平戸市大久保町2477
営業:8時30分~17時30分
※毎年6月第3火曜、水曜、木曜は休館
※駐車場は平戸港交流広場駐車場をご利用ください
【電話】0950-26-0636