- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県対馬市
- 広報紙名 : 広報つしま 令和7年10月号
■海の蘇生をテーマにしたパビリオンで対馬を発信
海洋資源の持続的活用と海洋生態系の保護をテーマに、環境保護の考え方を学べるパビリオン「BLUE OCEAN DOME」で6月に行われた「対馬ウィーク」では、1週間にわたって、対馬に住む人たちや研究者、企業関係者など、対馬に関わる人たちがそれぞれの考えを持ち寄って発表し、対馬の課題解決に向け意見を交わしました。また、その様子を多くの来場者とオンラインでつながった全世界の人たちが見守りました。
◇日米韓で海ごみを考える[Day1-2]
対馬に大量に流れ着く海ごみは、日本のみならず、世界の共通の問題として注目を集めています。世界の海を覆う海ごみについて、どのように取り組んでいるのか、日本(対馬)・米国・韓国の研究者や企業がそれぞれ発表を行いました。
また、それぞれの国の若者たちが、美しい海を守るためにどのような行動をしているのか、未来に向けてどのような活動をするべきかなどの意見を交わしました。
◇企業活動をとおして未来を描く[Day3-4]
環境問題の解決と事業の成長を同時に実現するための取り組みが対馬を舞台に始まっています。海ごみを再生した製品作りや販売をとおして、消費者にも、この問題を共有する取り組みやこれからの展望などが紹介されました。
かつて対馬の海の中に広がっていた広大な海藻の森は、磯焼けによって姿を消しました。対馬の現状を目にした企業が、それぞれの分野の強みを生かした藻場の再生や海の森につながる対馬の森林の再生に取り組む活動などについて、発表を行いました。
■会場では、海ごみを使ったオブジェや絵馬づくりも
会場の一角には、対馬の海ごみで作られたオブジェを始め、紹介するパネル展示、プラスチックをリサイクルし作る絵馬の展示やワークショップもあり、より多くの人たちに対馬の現状と取り組みを知ってもらう機会となりました。神戸から来場したお客様は「対馬の海ごみ問題が、このような状況だということをはじめて知りました。大変な状況ですが、地域の皆さんが諦めずに色々と取り組んでいる姿を見て、ぜひ対馬を訪れたいと思いました」と話していました。
■対馬出身者が見た対馬ウィーク
海洋プラスチック問題について、対馬が漂流するごみの防波堤となっていることが、私にはまるで、元寇で元の大軍を前にした対馬の状況と同じに思え、衝撃を受けました。一刻も早く、解決に向けたアジア近隣国との交渉、国際的な法整備の訴え、さらには海洋プラスチックのリサイクル商品開発がもっと必要だと感じています。旅行会社に勤務しているので、島外へのボランティアの呼びかけ、学生向けコンテンツの開発など、自分ができる取り組みを行っていきたいと強く感じました。
◇対馬をテーマに学び・交わる[Day5-6]
現在の危機を乗り越え、海に再び希望を見出すための人材育成を目的に開設された「対馬ブルーカレッジ」では、社会人としてそれぞれの分野で活躍する受講生が、自らの経験と学びを融合させた新たな事業構想を発表しました。
また、対馬から西部中学校と豊玉高校の生徒が登壇し、海ごみをとおして始まった都市部の中学生との交流から見えた対馬の未来、探究学習から考えた美しい海を守るアイディアを発表しました。
◇東アジアの津梁の島・対馬[Day7]
対馬をはじめ、海で囲まれた島々は、地球規模の環境問題によって、それぞれの島が育んできた独自の自然や文化を失う危機に直面しています。この危機を島同士の絆で乗り越えようと、友好都市である沖縄県竹富町と共に語り合いました。
気候変動による環境の変化や海ごみ、人口減少や高齢化など、対馬は、現代社会が抱える様々な問題にいち早く直面し、課題解決に向けて取り組んできました。対馬から見えてきた未来あり方を、世界中の人たちと共有し、その架け橋となるべく、対馬で取り組んでいる人たちが登壇し、その思いや将来への希望を発信しました。
■発表を終えて
▽波多江彩音(はたえあやね)さん
豊玉高校 2年生
気候変動と関わりがある磯焼けについて発表しました。文字や写真だけで発表してもあまり響かないと思い、得意なイラストを使って発表するなどいろいろと工夫しました。発表が終わって、少し他のパビリオンをみましたが、その中に、気候変動によって海に消えてしまう島があることを知り、自分たちの周りだけの問題ではないことを改めて認識しました。
▽橘優希(たちばなゆき)さん
豊玉高校 2年生
対馬の水産資源の現状と解決策について発表したのですが、想像以上の人が会場にいて、何を話したか忘れるくらい緊張しました。万博は、思っていたより巨大で、いろんな国の人がいて、そんな中で発表しても大丈夫なのかと心配になったけれど、ああいった場で発表をうまくすることができて、とても達成感がありました。
■この対馬(しま)の続きを
世界の人たちが手を取り合って、未来の地球や社会を実現するための方向性を描き出した大阪・関西万博。日本から世界に発信したイベントの中で、対馬もたくさんの発信を行いました。しかし、これで終わりではありません。万博を通して見えた対馬の未来を次の世代へつないでいくため、対馬に関わる全ての人とともに行動し続けましょう。
